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顧客満足度(CS)とNPSの違いとは?また実施の際の注意点について

顧客エンゲージメント
  • hatena

顧客満足度(CS)とNPSは、顧客体験(CX)を把握するうえで、とても有効な指標です。しかし顧客満足度とNPSは実際のところどのような違いがあるのでしょうか?また、顧客満足度とNPSだけでは特定できないような問題に対してはどうするのか?それを今から順にご説明していきます。

顧客満足度(CS)とその3つの指標(CSI、JCSI、NPS)とは?

顧客満足度(CS)とは?

顧客満足度(CS)のCSは、Customer Satisfactionの略です。顧客満足度とは、顧客がどれくらい自社のサービスに満足したかを示すものです。多くの企業では5段階評価が用いられています。日本では高度経済成長期の頃から顧客満足度が注目されるようになりました。経済発展と共にマーケティングの指標となるべきものが求められ、企業が成長維持していくためには顧客満足度が不可欠と見なされるようになったのです。

顧客満足度(CS)の3つの指標(CSI、JCSI、NPS)とは?

顧客満足度における3つの代表的な指標に、

・CSI
・JCSI
・NPS

があります。CSI(Customer Satisfaction Index)とは顧客満足度指数のことで、顧客期待値、顧客不満度、知覚値、知覚品質といったようなそれぞれに関連性の高い複数の質問を通して顧客満足度のスコアを出します。JCSI(Japanese Customer Satisfaction Index)はCSIを更に日本人向けに改良したもので、顧客満足、顧客期待、知覚価値、知覚品質、推奨意向、ロイヤルティの6つの項目からスコアを出していくものです。最後のNPS(Net Promoter Score)は顧客ロイヤルティを数値として表すものです。顧客ロイヤルティとは顧客が企業やブランドに対して感じる信頼や愛着のことです。そして近年では顧客満足度よりもNPSの方がより企業の業績との相関が高いと見なされ、重要視されるようになってきています。その理由を次章でご説明します。

顧客満足度(CS)とNPSとの違いとは?

顧客満足度(CS)とNPSとの違いとは?

まずNPS(Net Promoter Score)とは?

NPSはネットプロモータースコアの略で、日本語に直すと推奨者の正味比率のことを指します。

まず顧客を
・推奨者
・中立者
・批判者
の3種類に分類します。

「あなたはこの製品を親しい友人や家族に薦める可能性は、どのくらいありますか?」

0~10の11段階で評価してもらい、9~10を推奨者、7~8を中立者、0~6を批判者とします。9~10と答えた人は、この製品を愛用し、また周りの人にも薦めてくれる人。7~8と答えた人は、中立的な立場を取っている人。もしもっと他者で魅力的な製品が出てくればそちらに乗り換えるかもしれません。0~6と答えた人は、この製品に批判的な立場を取っている人。他社の製品に乗り換え、またネガティブな感想を広める人かもしれません。そして推奨者の割合-批判者の割合=NPSとなります。推奨者が増えるほどNPSの数値は高くなり、批判者が増えるほど低くなります。

顧客満足度とNPSの違いとは?

顧客満足度(CS)が現時点での顧客の満足度を表すものです。しかしNPSは顧客満足度と違って、現在も含め、長期的な満足度を
表します。NPSの数値は未来に向かって上向きになるのが望ましく、目指すべき目標に向けての改善の大きな手助けになります。

顧客満足度(CS)とNPS、それぞれのメリット

顧客満足度(CS)とNPS、それぞれのメリット

顧客満足度調査のメリット

顧客満足度調査をすることで、顧客の満足度が客観的な数値として表されます。そのデータを基にサービスを改善していくことによって、顧客満足度が高まると、リピーターが増加します。1人の顧客が企業にもたらす利益が大きければ大きいほど、当然その企業の利益は上がります。その価値をライフタイムバリュー(LTV)と言います(Life Time Value、日本語では「顧客生涯価値」)。

また顧客満足度が上がると新規の顧客も増えます。今はネット(SNS)で良いレビューが書かれると、昔と比べ情報がすぐ拡散します。拡散された情報は売上にいい影響を及ぼします。既存客だけでなく、新規の顧客を呼び込む絶好のチャンスになります。また新たに顧客となった消費者をフォローアップするためにも、顧客満足度調査は役に立ちます。常に顧客満足度を意識することで、新たな顧客はやがて固定客となって売上を支えていきます。そしてよりその企業の認知度や好感もアップします。良いイメージが定着することで、新規顧客もリピーターも増え、ますますその企業は繁栄するでしょう。

NPSのメリット

NPSのメリットは、業績との相関が高いことです。顧客満足度調査は長年顧客の製品に対する満足感、達成感を測るうえで使われてきました。しかし顧客満足度は必ずしも未来の業績に反映されるわけではありません。顧客満足度調査で満足と回答した顧客であっても、必ずしも次にリピートしてくれるわけでも、友人や家族に薦めてくれるわけでもなかったのです。そこで、より未来の業績に反映されやすいNPSに注目が集まるようになりました。

ではNPSは何故業績との相関が高いのでしょうか?NPSの数値が高いということは、批判者が少なく推奨者が多いということです。これは企業の業績に主に次の4つの好影響があります。

・再購入や継続的購入が増える。
・アップセル・クロスセルに繋がる可能性が増える。
・友人、知人に薦める顧客が増える。・SNSなどで好意的なレビューを投稿する。

また推奨者のライフタイムバリューは批判者の約2.4倍あると言われています。シンプルな計測法でかつ業績と強い相関が期待できるため、今日では多くの企業がNPSを導入しています。

顧客満足度(CS)とNPS、それぞれのデメリット

顧客満足度(CS)とNPS、それぞれのデメリット

顧客満足度調査のデメリット

顧客満足度調査は、VOC(顧客からの声)を拾い上げ、自社のサービス改善に活用していくうえで、大変有効な手段と言えます。しかし実施の方法次第では、正しく機能しない場合もあります。その理由としては、
・顧客満足度調査をする目標が不明確。
・顧客満足度調査の実施自体が目的化している。
・顧客満足度調査の個々の結果は顧客の主観に大きく依存する。
といったことが挙げられます。企業が目指す目標や基準を明確に定めていない場合(前年度との比較のみなど)、また調査の実施自体が目的化してしまっている場合、その結果をどうフォローアップして次の経営戦略に繋げていくかがはっきりせず、せっか句集めたデータを活かせていないケースがあります。そして顧客満足度調査の個々の結果は顧客の主観に大きく依存します。また同程度のサービスであっても、その時の状況次第では回答に大きく差が出てしまうこともあります。その為、本当に客観的に信頼できるデータであるか、疑問が生じるケースも出てくるのです。

NPSのデメリット

NPSのデメリットとしては、まずそれ単体では批判者の理由を充分に解明できないことが挙げられます。推奨者、批判者それぞれの明確な理由がわかっていないと具体的な対策も練ることができません。さらに、回答者の数についても考えなくてはなりません。少人数による回答では、誤差が大きくなってしまうことが懸念されます。誤差を少なくしたいのであれば、少なくとも400人以上の顧客に回答してもらう必要があるでしょう。そして結果に対するフォローアッププランが用意されていないと、実質的な事業の改善に結びつきません。

またNPSは他社と評価基準を統一することができません。他社との正確な比較が困難です。ですからNPSはあくまでも自社内での様々な比較におけるサービス改善などに活用する目的で使用すべきでしょう。特に他業種の会社との基準の違いは大きく、比較することが困難です。やはり、自社内での調査で使うべきであり、比較するとしても同業種の会社に限られるでしょう。さらに、同一企業内でも、条件次第で、例えばアンケートのタイミング(購入直後か、購入してからだいぶ時間が経った後など)などで回答はまた大きく変わってきます。ですからできるだけ、条件や毎回の質問内容を統一して、継続的にデータを取得し続けることで、質の高いデータ蓄積を心がけていくことが大切なのです。

さらに、よく疑問視されているのが、日本でNPS調査を行う場合に見られる日本ならではの現象についてです。その現象とは、日本人の中心化傾向によって調査結果が中心に寄ってしまうというものです。中心化傾向とは、人が評価を下すときに、両極端を避け、中心の値に集まる傾向のことを指します。評価対象のことを明確に把握していなかったり、評価に自信がなかったりするとき、もしくは評価を下すことによって嫌われることを防ごうとするときに起こりやすい心理作用です。日本人は外国に比べ中心化傾向が強く、NPS調査の結果が中心に寄り、実際よりもマイナスの評価が出ます。日本でのNPS調査は正確な数値を測定できないことが多くあるため、リアルな評価が分かりづらくなってしまいます。

顧客満足度(CS)とNPSだけでは特定できない問題はどう洗い出すか?

顧客満足度(CS)とNPSだけでは特定できない問題はどう洗い出すか?

顧客満足度(CS)とNPSだけでは全ての問題を洗い出すことは不可能

顧客満足度調査やNPSだけでは、マーケティングにおける全ての問題を洗い出すことは不可能です。何故なら、どちらも顧客体験(CX)全体を説明することができないからです。顧客満足度調査やNPSの数値が低い場合、その理由はたいていの場合複数の理由が考えられます。しかしそのどれかを特定するには、たいていの場合はそれを解釈する側の考え方に依存している場合がほとんどで、これでは正確な原因が特定できません。そのため、更に複数の客観的指標を取得し、顧客満足度調査やNPSで浮かび上がってきた問題の原因を明確に特定することが必要になってきます。

その為の指標として、

・GCR(Goal Completion Rate:目標達成率)
・CES(Customer Effort Score:顧客努力指標)
・CSAT(Customer Satisfaction Score:顧客満足度指数)

の3つがあります。

GCR(目標達成率)

GCR(目標達成率)とは、商品購入によって顧客が目的を達成することができたか?を表す指標です。仮に顧客が目的を達成することができなかった場合は、何故それができなかったのか?また顧客はそもそも何を求めていたのか?を調査し、改善する必要があります。

CES(顧客努力指標)

CES(顧客努力指標)とは、顧客がいかに手間と時間をかけることなく目的を達成することができたかを表す指標です。仮に顧客が簡単にかつスピーディに問題を解決することができたなら、その顧客の企業に対する信頼性がアップ、紹介客も増えることでしょう。

「○○の作業はどれくらい簡単でしたか?」

といった質問をして、5~7段階で評価してもらい、そのスコアを出します。CESはGCRで発見された問題を更に補完する役割を果たし、顧客満足を実現するために企業が何処を改善すべきかを導き出してくれます。

CSAT(顧客満足度指数)

CSAT(顧客満足度指数)とは、顧客の感情的満足を表す指標です。とても満足、からとても不満、までの5段階で評価を出し、特定の状況において顧客の感情的満足が数値化されます。顧客が感情的に満足していれば、必然的にリピートされる可能性が高まります。新規顧客を獲得するより、既存客にアピールする方が遙かにコストが安いため、CSATのスコアは企業にとって非常に大切な指標になります。GCR、CES、CSATの3つの指標を捉えることで、顧客満足度調査やNPSだけでは特定できなかった問題を発見し、業績向上に結びつけることができるでしょう。

顧客満足度(CS)とNPSの違いとは?また実施の際の注意点についてのまとめ

以上、顧客満足度(CS)とNPSについてと、実施の際の注意点などをご説明させて頂きました。顧客満足度(CS)とNPSは、顧客体験(CX:Customer Experience)を把握するうえで、とても有効な指標になります。もともと日本では顧客満足度がマーケティングの重要な指標として見なされてきました。しかし顧客満足度はあくまで現在の顧客の満足度を表すもので、未来における企業の成長の度合いを約束してくれるものではありませんでした。そしてその後、より企業の業績との相関が高いNPSに徐々に関心が集まるようになりました。NPSによって、顧客が企業やブランドに対して、どれくらい信頼と愛着を持っているかを数値化することができる利点があるため、多くの企業がこれを採用してきました。そして、より顧客心理を深く理解するためには顧客ロイヤルティ、更には顧客エンゲージメント(企業と顧客との繋がりの強さを表す)などの考察が不可欠になります。

関連記事としては、
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カスタマーロイヤリティとは?顧客満足度や顧客エンゲージメントとの違い
のような記事も大変参考になります。是非併せてお読み下さい。

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