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世界的に拡大中の「HRテック」とは?市場規模から必要性まで解説

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  • hatena

ただ、そもそも「HRテックとは何か」把握していない人もいるでしょう。そこで当記事では、HRテックとは何かといった説明からHRが必要な理由まで、詳しく解説していきます。

HRテックとは

HRテックとは、HR(Human Resource:人材)とテクノロジーを組み合わせた造語で、最新テクノロジーを活用した人材関連のサービスを指します。具体的には、採用から人材育成、評価などを含む幅広い人材関連業務に対し、人工知能(AI)やクラウドなどの最新テクノロジーを使ったサービスのことです。アメリカでは、HRテック領域のスタートアップが数十億円の資金を集めるなど、世界的に注目を集めています。金融分野のフィンテック(ファイナンス×テクノロジー)や広告業界のアドテック(アドバータイジング×テクノロジー)のように、各業界でテクノロジーを取り入れる動きが進んでいます。人材業界・企業の人事部門も同様です。

HRテックのジャンル

HRテックといっても、対応している業務によって様々です。大別すると「採用」・「育成」・「労務管理」の3つに分類されます。採用向けのHRテックは、いかに優秀な人材を採用するか、採用後の定着率をいかに高めるのかに着目したサービスです。例えば、注目されている採用ツールにアメリカ発のHireVueがあります。HireVueは、人工知能搭載のオンライン面接プラットフォームで、応募から選考までの業務プロセス効率の向上に貢献するものです。日本企業を含む世界800社以上で利用されています。

一方育成向けのHRテックは、仕事へのやりがいや従業員への正しい評価をすることで、離職率の低下に貢献するサービスです。例えば、リンクドアンドモチベーションが提供する「モチベーションクラウド」は、ビックデータを基に組織改善を支援する国内初の組織改善クラウドです。様々な視点から組織を「見える化」し、これまでに5,000社以上の導入実績があります。最後に労務管理向けのHRテックは、労務・給与管理などのバックオフィス業務を自動化するサービスとなります。海外では、シリコンバレー発の「Zenefits」というサービスが注目を集めています。Zenefitsは、中小企業向けにクラウド上で給与支払いや勤怠管理ができるサービスで、5億ドルの資金調達に成功し、ユニコーン企業入りを果たしました。

HRテックの市場規模

HRテックの市場規模調査会社のシード・プランニングが発表したレポートによると、日本国内におけるHRテック市場は2017年に586億円だったのに対し、2023年には2,504億円まで増加する見込みです。一方世界の市場規模は、すでに1兆超えの規模を誇ります。市場シェア上位5カ国は、順にアメリカ、イギリス、インド、カナダ、中国となっています。HRテックに対する認知度の低さやサービスを提供する企業数が少ないことから、日本のHRテック市場は伸び代があるといえます。また、後述する日本特有の社会問題も、HRテック市場の成長を後押しするでしょう。

HRテックはなぜ必要なのか

HRテックはなぜ必要なのかHRテックが必要とされている背景には、日本の少子高齢化に伴う企業の人材不足があります。厚生労働省が発表した「一般職業紹介状況」によると、有効求人倍率は、2009年に0.45倍だったのが右肩上がりに2019年には1.63と急増しています。つまり、求職者1人に対する人材を求める企業の方が多いことがわかります。

とはいえ、企業としては当然誰でも良い訳ではありません。生産性の高い「優秀な人材」を求めています。HR総研が各企業の人事向けにアンケート調査を実際したところ、「(今後)最も求められる人事の役割は何ですか?」という質問に対し、「ビジネスの成果に貢献する(戦略パートナー)と回答した人が最も高い割合(53%)を占めました。これらのデータから、企業は優秀な人材を戦略的に採用したいニーズが読み取れます。そこで期待されているのがHRテックです。膨大なデータやAIを活用したHRテックにより、優秀な人材を採用し、定着率を高めることで、生産性を最大限まで引き上げることができます。日本の社会問題に直接アプローチできることに加え、テクノロジーによる業務効率の向上も、HRテックが必要な理由です。人事部門の業務の一部をテクノロジーが代替することで、「人間にとっての本質的な作業」に集中できます。現代は、パソコン1台で様々な業務が完結する時代です。HRテックは、社会にとって必要不可欠な存在といって良いでしょう。

世界的に拡大中の「HRテック」とは?市場規模から必要性まで解説

今後も「HRテック領域」が拡大することが予想されています。従来のHRテックでは、自社の従業員の採用や育成に向けた「内向きのサービス」でしたが、今後は正社員だけでなく、パートやアルバイト、フリーランサーへ対象領域が広がります。雇用形態の多様化が進んでおり、企業における正社員以外の労働者が増えているためです。総務省統計局のデータによると、1990年に881万人だった非正規雇用者が2014年には倍以上の1,962万人まで急増しています。アメリカでは、「2027年に労働者の半数以上がフリーランスになる」というデータがあるなど、会社員からフリーランスへのシフトは世界的な流れです。

社会の変化に応じて、HRテック領域は広がり、ターゲットの数が増えます。将来的には、「企業」などの縛りはなくなり、ひとり一人に合わせたHRテックが普及するでしょう。HRテックは単に企業の業務効率を上げるためのものではありません。ひとり一人の働き方を変える可能性を秘めた、変革の第一歩です。