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ロイヤルカスタマーとは?育成方法や関連事例、囲い込み戦略などを紹介!

マーケティング
  • hatena

店舗の売り上げアップのカギを握る存在として知られているのが、ロイヤルカスタマーです。今回はロイヤルカスタマーを作る方法や大手企業が実施しているサービスの関連事例について解説していきます。ロイヤルカスタマーの形成に悩んでいる店舗運営者はぜひ参考にしてみてください。

ロイヤルカスタマーとは?

そもそもロイヤルカスタマーとは?ロイヤルカスタマーとは、企業が提供する商品やサービスに愛着を持つ顧客です。英語ではloyal customerとあらわすことができ、日本語では忠実な顧客とも訳せます。忠実という意味を持つだけあって、競合他社に流れにくいという特徴があります。

ロイヤルカスタマーと優良顧客の区別がつかない方もいることでしょう。優良顧客はたくさんの商品を買って、一度に多くのお金を費やしてくれる存在です。ただし、特定の企業が提供する商品やサービスに対して愛着を持っているわけではありません。愛着がなければ、他社に流れてしまう可能性が危惧されます。

ちなみに、ロイヤルカスタマーが売り上げの8割を占めるという法則も知られています。そのため、新規顧客よりもロイヤルカスタマーの獲得に注力した方が売り上げを安定させやすいといえるでしょう。同様に、ロイヤルカスタマーの離反率を下げることで、利益の増大にも直結するといわれています。

また、ロイヤルカスタマーは商品やサービスに愛着を感じていることから、建設的なフィードバックをもたらすこともあります。ロイヤルカスタマーから、企業側では明るみに出なかった視点や発想を得ることで、商品やサービスのクオリティーを高めることもできるでしょう。

ロイヤルカスタマーの重要性

ロイヤルカスタマーと顧客の階層では、なぜロイヤルカスタマーが重要なのでしょうか。

優良顧客との違い

「ロイヤルカスタマー」と「優良顧客」の境界線について気になる方もいることでしょう。

優良顧客はある商品・サービスを継続利用している顧客、ロイヤルカスタマーはある商品・サービスを「好んで」継続している顧客です。つまり、決定的に違うポイントとしては、その商品、またはそのブランドだから購入しているのかどうかです。

この2者について理解するために、顧客の階層をピラミッド形式であらわし、ロイヤルカスタマーの位置づけを確認してみましょう。顧客の階層はピラミッドの上から順番にあらわすと、熱狂顧客、ロイヤル顧客、継続顧客(優良顧客)、日和見顧客、トライアル顧客に分けられます。一度でも購入するとトライアル顧客となり、特売や値引きの時にリピートしてくれると日和見顧客と呼ぶことができます。

さらに上の階層にある継続顧客は、自社の製品やサービスを継続して利用してくれる顧客をさします。ただ、継続顧客は習慣で利用を継続してくれている可能性があります。したがって、継続顧客に関しては商品やサービスを好んで利用してくれるロイヤル顧客に育てることが非常に重要です。さらにロイヤル顧客を熱狂顧客に成長させることができると、感動体験を友人や知人、同僚などに共有してくれるようになります。

このようにロイヤルカスタマーの位置づけを理解しておくことで、顧客の育成段階が明確になります。ロイヤルカスタマーの育成について漠然としたイメージを持っている方は、まず顧客の状況をピラミッドの階層構造に照らし合わせて把握してみるとよいかもしれません。

企業により異なる定義

ロイヤルカスタマーを育成する方法ロイヤルカスタマーの定義は、実は企業によって異なることも事実です。

ロイヤルカスタマーの分析方法

自社にとってのロイヤルカスタマーとは誰かを見抜くためには、以下の3つの分析方法が有効です。

LTV(Life Time Value/顧客生涯価値)

LTVとは、その顧客が生涯において自社にもたらす恩恵のことを指します。金銭的な貢献だけではなく、口コミでサービスを広げてくれるなどの価値も含めた意味合いとなります。

算出方法は実際にはこれといった指標があるわけではありませんが、以下の計算方法で見積もることが可能です。

・(顧客の)平均購入単価×平均購入回数
・(顧客の)年間取引額×収益率×顧客の継続年数

顧客がロイヤルカスタマーや熱狂顧客になると、自社や商材の宣伝をしてくれたり、高い購入頻度で利用し続けてくれるなど、LTVの数値は高まります。

NPS(Net Promoter Score/ネットプロモータースコア)

ロイヤルカスタマーに関する注意点

NPSとは、自社やブランド、および商品・サービスへの愛着度を図る指標です。この指標が分かることで、どの顧客が自社に対しての愛着を抱いてくれているかが明確になります。

やり方は2工程あり、まずは顧客に対して以下の質問を投げかけて見てください。

【質問内容】
「あなたがこの企業(製品・サービス・ブランド)を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」
そして、その回答を下記のように0~10の11段階でもらいましょう。

■出典:https://www.nttcoms.com/service/nps/summary/

回答をもらったら、下記のようにNPSを算出します。

●推奨者の割合ー批判者の割合=NPS

このアンケートを行う際には、より正確な算出をするために、出来れば少なくとも400サンプルはあるのが望ましいです。

RFM(Recency、Frequency、Monetary/最終購入日、頻度、購入金額)

RFMは、マーケティングで利用される顧客分析方法で、
・最終購入日
・購入/利用頻度
・購入金額
上記3つの指標を算出したものです。

それぞれの指標を確認し、より最終購入日が近く、購入頻度が高く、そして購入金額が高額な顧客がロイヤルカスタマーと言えます。この基準は企業やビジネスモデルによって変わりますので、自社の課題や目的を明確にした上で基準を策定しましょう。

CPM(Customer Portfolio Management/顧客ポートフォリオマネジメント)

CPMとは、顧客を10種のセグメントに分けて、セグメントに応じたアプローチをして検討度合いを高める(ナーチャリング)分析方法です。

■出典:https://www.fanplayr.jp/post/cpm_rfm

①初回客、②よちよち客、③流行客、④こつこつ客、⑤優良客、⑥離脱初回客、⑦離脱よちよち客、⑧離脱流行客、⑨離脱コツコツ客、⑩離脱優良客に分かれます。

この中では、⑤がロイヤルカスタマーに該当し、①~④のセグメントの顧客は育成をすることでロイヤルカスタマーになる可能性があります。⑤以降は休眠顧客になりますので、再び自社の商品を手に取ってもらえるようにアプローチする必要があります。特に、⑩はもともと優良顧客ですので、戻ってきてもらえたらすぐにロイヤルカスタマー化する可能性が高く、離脱顧客の中では優先度が高いです。

ロイヤルカスタマー育成のポイント

ロイヤルカスタマー育成には、顧客のセグメントを見定めること、接触頻度を増やすこと、One to Oneマーケティングの実践の3つが効果的です。

対象顧客セグメントを見定める

対象顧客セグメントとは、その顧客の属性(年齢、性別、居住地域、行動傾向など)をもとに顧客を分類することを指します。このセグメント分けをすることで、例えば、顧客の居住地域の店舗でのセール情報の発信や顧客が好む商品の発売の告知など、パーソナライズされた顧客対応が可能になります。顧客にとっては、自分の興味関心や行動エリアと合致した情報が来ることで、行動のモチベーションが生まれやすいです。対象顧客のセグメントに合わせたアクションを取り、顧客の購買行動を促しましょう。

接触頻度を増やす

メール配信、アプリのプッシュ通知、DM送付など、顧客の連絡先へ情報発信を定期的に行うことで、顧客とのタッチポイントを増やしましょう。人は、接触頻度の高いものに愛着や親近感を抱く心理的傾向を持っており、これを「単純接触効果」と言います。

どんなに顧客として好みの商品を扱っていたとしても、ずっと接点がないままでは、競合に興味を引かれてしまいかねません。ある程度関係値のある顧客に対しては、電話による連絡をするなどして接触頻度を増やし、顧客の近況やニーズもその際ヒアリングするのがおすすめです。

One to Oneマーケティングの実践

One to Oneマーケティングとは、それぞれの顧客の購買/行動傾向をもとにニーズを分析し、それぞれに最適なコミュニケーションをとるマーケティング手法のことを言います。先述の対象セグメントを見定めることと似た概念ですが、One to Oneマーケティングは、その内容をもとに実際にアクションを起こすフェーズまでを実践することまでを指しています。顧客の好みや、いつどのような時にどんな商品を購買するのか、利用用途は何かなどを把握した上で、適切と思われるコミュニケーションを行いましょう。

顧客囲い込みを実現をサポートするITツール

ロイヤルカスタマー育成に役立つITツールとして、ここではマーケティングや営業に役立つ基本のツールを3つご紹介します。

CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)

CRM(Customer Relationship Management)は、日本語で顧客関係管理という意味で、顧客との関係構築をしていくための考え方です。ツールとしてのCRMでできることとしては、顧客情報の管理・分析、問い合わせ管理、メール配信、イベント・集客管理などがあります。顧客情報の管理や、顧客分析により今後の施策を考えたい場合には優先的に取り入れるべきツールと言えるでしょう。

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SFA(セールスフォースオートメーション)

SFA(Sales Force Automation)とは、日本語では営業の自動化という意味で、「営業支援システム」と呼ばれています。CRMと混同されがちなツールなのですが、役割としてはCRMは顧客管理、SFAは営業サポートとなり、CRMはマーケ担当者を始めとし全社的に、SFAは営業組織の担当者が使用することがメインになります。

具体的な機能としては、顧客管理、案件管理、見積書・請求書作成、行動管理、売上予測、日報やレポート管理等が挙げられます。CRMとSFAの両機能を搭載するツールも増えているので、どちらも導入していない場合には一体型のツールを導入してもいいかもしれません。

MA(マーケティングオートメーション)

MA(Marketing Automation)は、その名の通り、マーケティング業務の自動化・効率化をサポートするツールです。マーケティング担当者が行う、顧客分析やセグメント分けなどの業務を代わりに担ってくれるため、顧客への情報発信や連絡にかける時間を効率化できます。事務的な連絡や一人一人への情報配信を一括して自動で行うことで、担当者は本来行うべき、今後のマーケティング施策の構想や、ロイヤルカスタマーへの対応・育成について考えることができます。

顧客ロイヤリティ向上の事例

自社の顧客ロイヤリティを向上させる参考として、ここでは3社の成功事例をご紹介します。

スターバックスコーヒー

ロイヤルカスタマーに焦点をあてた事例としてまず挙げられるのが、『スターバックス』のサービスです。スターバックスはアメリカのワシントン州シアトルで開業した世界規模で展開するコーヒーチェーン店です。

店内には電源やWi-Fiなどの環境が整っている傾向なので、それぞれが自由な空間を満喫でき、日本でもスタバの相性で老若男女から親しまれるに至っています。スターバックスは、2017年に初のロイヤリティプログラム「STARBUCKS REWARDS(スターバックス リワード)」を開始しました。

WEB登録済みのスターバックスカードで商品を購入すると、カスタマーはSTAR(スター)を貯めることができます。具体的には買物54円(税込)あたり一つのSTARが集まり、250個に到達するとGOLD Star会員にランクアップする仕組みです。

貯めたSTARは、公式アプリやWEBサイトで発行できる「Reward eTicket(リワードeチケット)」に交換できます。カスタマーはフードやコーヒー豆などの商品を交換できるほか、コーヒーセミナーの予約や、ドリンクのカスタマイズなどのサービスなども受けられます。スターを集める仕組みはカスタマーにベネフィットをもたらし、ロイヤルカスタマーの拡大につながることでしょう。

ナノ・ユニバース

人気ファッションブランドとして知られる『ナノ・ユニバース』では、ロイヤルカスタマーに向けたECサイト設計へと改修を施し、社長を筆頭にCRMやマーケティング戦略を見直しました。ECサイトの役割をロイヤルカスタマーのための受け皿とし、ブランドのファンや購買頻度の高い顧客層に好まれるサイトへと変化させたのです。

具体的に行われたこととしては、予測キーワード表示機能や、レコメンド機能を搭載し、リピーターがよく活用するキーワード検索によるUXを充実させています。詳細検索では素材、袖丈などの検索もでき、ユーザーの商品探しをよりスムーズにできるような工夫がされています。

また、店舗店員が他媒体に載せているコーディネートを、サービス同士を連携させることで直営サイトからもそのコーディネートを見られるようになり、ユーザーが受け取れる情報量はよりリッチになっています。自社が大事にするべき顧客は誰かを明確にした上で、徹底的にロイヤルカスタマーに寄り添ったECサイトにしたこと、また、社長自ら旗振り役となり全社的に取り組みをしたことが成功要因と言えます。

ロクシタンジャポン

女性に人気の化粧品ブランド『ロクシタン』では、データベースの一元化によりロイヤルカスタマー戦略に成功しています。

同社が顧客データ管理の一元化を行う以前の2014年頃はまだ、ECと実店舗での購買データ管理は別々に行っており、自社の顧客の正しい購買情報が分からない状態でした。そこで、ビジネスモデルを「誰もが正しいデータをもとにしたアクションをとれること」と再定義し、データの一元化を社内へ説得することから始め、まずはECでデータ分析をもとにしたアクションを開始したそうです。

その結果、実店舗と比べて12%の購買頻度アップに成功したため、店舗の方でも同じようにデータ分析からのアクションを取る流れを作っています。顧客の行動履歴を確認しサンプル送付などを行った結果、もともと購買に繋がらなかった顧客からの反響が5倍にまで増えています。このように、顧客データの管理と分析を行い、その顧客にとって適切なアクションを行うロイヤルカスタマー戦略は業界問わずに応用できる事例といえるでしょう。

ロイヤルカスタマーに関する注意点

ロイヤルカスタマーは売り上げを高めてくれる存在である一方、既存顧客ばかりに依存してしまうことは危険だといえます。なぜ危険なのか注意点を確認してみましょう。

注意点1.ライフスタイルの変化によって継続利用が止まる

ロイヤリティーが高くても、ライフスタイルが変わってしまえば商品やサービスを利用する機会がなくなる可能性はゼロとは言い切れません。たとえば、趣味でスポーツを行っている方が、けがをきっかけに運動をやめてしまうことがあります。その場合、いつも愛用していたスポーツ用品でも使わなくなってしまうでしょう。このようにライフスタイルの変化によって継続利用が途絶えてしまう点は頭の片隅に入れておかなければなりません。

注意点2.そもそも愛着を持っていない可能性がある

ロイヤルカスタマーの中には、乗り換えが面倒で商品やサービスを利用している人々も存在し、他社のキャンペーン動向によっては離脱してしまうリスクも秘めています。また、仮に少なからず愛着を感じていたとしても、販促活動の内容によってはマイナス感情を呼び起こしてしまい、同様に離脱を引き起こす可能性もあります。したがって、事業を安定的に存続させるにはロイヤルカスタマーの売り上げに依存しないよう注意することも大切です。

まとめ

自社やブランドのファンであるロイヤルカスタマーは、人数が多ければ多いほど売上アップや、顧客による宣伝効果も多いに期待できます。また、ロイヤルカスタマーをさらに効率的に育成する方法としては、コミュニティマーケティングなどもおすすめです。自社の顧客が居心地の良い環境を作り、熱狂的なファンに育成しましょう。

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