飲食店がお客の意見を取り入れ、料理やサービスの質を改善する手法としてアンケートがあります。
フィードバックがしやすく、集客にも効果的であることから人気です。今回は、飲食店が実施するお客向けアンケートで聞くべき内容や、注意点、集計方法について解説します。
飲食店がアンケートを実施する目的
飲食店によるアンケートはいわば、マーケティング手法の一種です。お客が飲食店舗に対して何を思い、感じているのか。胸の奥に抱いている本音を引き出すことを狙っています。
導入部で触れたように、収集したアンケートは料理やサービスの質の改善に活かされます。アンケートの声を踏まえ、料理の値段やサービスのレベルを刷新していく結果として、顧客満足度や売上高の向上につながっていきます。
ただ、アンケートの結果を正確に飲食店経営に反映させるためには、アンケートを実施する目的を明確にしなければなりません。アンケートの目的が不明瞭だと、アンケートの精度が下がるからです。アンケートをなぜ実施し、アンケートで何を知りたいのかを設定することは不可欠です。
また、アンケートは、固有名詞や数字を入れたものにしましょう。例えば、顧客の来店頻度を把握するためのアンケートを実施する場合、「ご来店頻度はどのくらいですか」という質問に設定し、回答欄は「ほとんど毎日/1週間に2〜3回/1週間に1回/1カ月に2〜3回/1カ月に1回/半年に1回/1年に1回/それ以下」などと正確な数字を混じえたものにすると、正確なアンケート結果を導きやすくなります。
飲食店がアンケートで聞くべき内容
飲食店がアンケートでお客に聞くべき内容にはどのようなものがあるのでしょうか。それは、アンケートの目的に応じて異なります。
飲食店のアンケートは、「顧客満足度」、「顧客情報収集」、「販促・集客」のいずれかの情報を知ることが目的です。それでは、目的ごとに聞く内容について、説明していきましょう。
顧客満足度
顧客満足度は、顧客が飲食店で提供される料理や接客サービスにどのくらい満足を感じているのか知ることを目的としています。
顧客満足度は、料理だけ、接客サービスだけといった単一の指標で決まることはなく、料理や接客サービス、店に着くまでのアクセス、来店客の雰囲気など、総体的な評価で決まるため、アンケートにおいては、質問項目を細かく設定する必要があるのでしょう。
顧客満足度について問う質問には、以下のようなものがあります。
- 価格は妥当でしたか
- 料理の味はいかがでしたか
- 料理の品ぞろえはいかがでしたか
- 接客対応には満足頂けたでしょうか
- 待ち時間はいかがでしたでしょうか
- 店内の清掃はいかがでしたでしょうか
- 接客を担当したスタッフの名前を教えてください
顧客情報収集
顧客情報収集は、リピーターを確保するために、顧客の年齢や性別、どこから来たかといった属性を把握することを目的としています。
年齢や性別によって、提供すべき情報や、情報の見せ方が違ってくるため、顧客の属性情報は、飲食店のマーケティングは重要です。属性のみならず、LINEやメールアドレスといった顧客の連絡先も、ターゲットに標準を絞ったマーケティングを実施する上で中心です。
また、これらの顧客情報は収益増を目的としたマーケティングのほか、メニューの開発や店内レイアウトの刷新、他の飲食店を比較した自店舗の強みや弱みの把握にもつながります。
顧客情報収集を目的としたアンケートの質問には、以下のようなものがあります。
- 名前
- 性別
- 年齢
- 生年月日
- 職業
- 家族構成
- メールアドレス
- 電話番号
- 住所
- 外食の頻度
- 一度の外食費用
販促・集客
販促・集客は、「店に何人で来客したか」「来店した理由は」「店をどういった媒体で知ったか」などを聞き取り、広告効果やサービスのニーズを知り、後のマーケティングや集客に生かすことを狙いとしています。
これらの情報を収集することで、どの集客戦略が適切だったかを理解でき、無駄な広告費を抑えられます。また、顧客が来店した理由や経緯を把握することで、「また来たい」と思ってもらえるリピートに焦点を置いた販促活動を展開できるようになります。
販促・集客を目的としたアンケートの質問には、以下のようなものがあります。
- 来店のきっかけを教えてください
- 飲食店の利用用途は何ですか
- よく利用するグルメサイト(食べログなど)を教えてください
- あると嬉しいキャンペーンがあれば、教えてください
- クーポンがあれば使いますか
- 飲食店はどうやって探しますか
質問は単体でも効力を発揮しますが、複数を組み合わせることで、より高い精度で目的の達成に注力できます。
飲食店向けアンケートの形式
飲食店向けアンケートを実施する方法は、さまざまなものがあります。目的に合致した最適なアンケート方法を選ぶことで、アンケートの効果を最大限に引き出せます。
紙
紙を使ったアンケートは、最も一般的なアンケート手法です。費用代も印刷費のみで、飲食店に統計的なスキルがなくても、簡単に実施できます。
紙のアンケートは、お客が飲食店で料理を待っている時や、料理を食べた後にすぐ回答ができるため、サービスや料理に対する率直な感想をもらいやすいです。このため、顧客満足度を問うアンケートで効力を発揮しやすいでしょう。
一方で、紙のアンケートは、ペンを使って文字を書くという煩雑さから、回収率が低いというデメリットがあります。アンケートの存在そのものを気づいてもらいにくいことも多々あります。
そのため、飲食店のスタッフが、タイミングを見計らって、お客に直接アンケート用紙を手渡すと効果があります。また、来店から数日経過した後に、はがきを送るのも良いでしょう。
対面
アナログなやり方にはなりますが、対面のコミュニケーションで、アンケートするという手法もあります。会話でアンケートをするという古典的な方法です。
対面でのコミュニケーションによるアンケートは、お客とコミュニケーションを取りながら、アンケートを取れるだけでなく、事前に用紙やアプリなどを用意する必要がないメリットがあります。文字では表現しづらい微妙なニュアンスもお客から読み取れるのもグッドポイントです。
ただ、対面でのコミュニケーションによるアンケートは、非効率的な上、主観が入り、正確な統計が取れないことがあります。また、お客1人1人に対して、多くの質問ができず、1つや2つぐらいしか質問の回答が得られないということもデメリットになります。
アンケートツール
アンケートツールを使ったアンケートは、Googleフォームやkintoneといったアンケート作成ツールを使うため、多くの人の声を集められます。
紙を使ったアンケートと異なり、文章を作る手間やコストがかからず、調査期間を短縮できます。また、対象を絞ってアンケートを実施するため、回答者を集めやすい特徴もあります。回答者の多くはスマートフォンやパソコンから質問に回答するため、回答率を高めやすいでしょう。
さらに、集計したデータは元から電子化されているため、統計に用いやすい特徴があります。
一方で、ツールによっては、初期導入費が高額で、故障などが発生した時は費用や回復に時間がかかるといったデメリットが生じます。
飲食店向けアンケートの注意点
飲食店がアンケートを作る際、複数の注意点があります、記入率を高めたり、課題を解決したりするためですが、どんな注意点が必要になるでしょうか。
アンケート項目や質問内容に知恵を絞る
アンケートは、目的に応じて質問が変わってきます。
アンケートの目的が、顧客満足度であれば、サービスの内容について問う質問項目を多くし、サービス内容を評価できるよう、評価を定量化した質問を多くする必要があります。また、顧客情報収集を目的としたアンケートであれば、個人情報の習得に力を入れなければなりません。思いついた質問を羅列するのではなく、質問内容をよく吟味しましょう。
また、アンケート内容は、相手が答えやすいようにする必要があります。自由記述式のオープンクエスチェンではなく、イエスかノーで答えられるクローズドクエスチョンの比率を多めにすると、回答者が質問に答えやすいと感じやすくなります。ただ、回答がイエスとノーの2択しかない場合は、バリエーションに欠けるため、クローズドクエスチョンでも選択肢を多く用意しておきましょう。
また、アンケートは個人情報を利用しないことや、アンケートをどんな目的(サービス改善など)で利用するか利用使途をしっかり書いておくことが重要です。
アンケートの回答にお礼する
アンケートへの回答は、億劫な作業です。特に、飲食店に食事に来ている場合はなおさらでしょう。
そのため、お客にアンケートに回答するインセンティブとして、お礼を用意すると効果的です。お礼は、お店のクーポンでも良いですし、割引に使えるポイントでも良いでしょう。アンケート回答への意欲をかき立てるためのお礼のバリエーションを持っておくことで、回答率の引き上げにつながります。
アンケートツールを工夫する
アンケートツールは、飲食店の利用者層に合ったものを選びましょう。
例えば、お客に若者が多ければ、スマートフォンやパソコンで回答できる、ネットでのアンケートが適しています。一方、高齢者が多い飲食店であれば、紙媒体や口頭でのアンケートの方が回答率は高くなりやすいですし、回答の粒度も向上します。飲食店の客層は、バリエーションに富むため、アナログとデジタルの両方を組み合わせたアンケートにすることもオススメです。
飲食店向けアンケートの集計方法
飲食店向けアンケートは、ただ集計するのではなく、集計した後に結果をどう分析するかが大事です。アンケートを集計する方法について説明していきましょう。
アンケートの集計方法
◎単純集計
単純集計は、各項目の合計を出すだけで集計可能です。全体の大まかな傾向を明らかにするのに適した集計手法になります。
例えば、「A店の接客サービスは満足できるものでしたか」という質問に、イエスかノーで回答するものが単純集計が可能になる質問になります。この場合、イエスとノー、それぞれの回答者の人数をカウントするのが、単純集計です。
◎クロス集計
クロス集計は、複数の統計項目を掛け合わせた集計手法です。
例えば、先に挙げた「A店の接客サービスは満足できるものでしたか」という質問に加え、男性か女性かを問う「性別」を掛け合わせて、飲食店の属性ごとの満足度を明らかにするアンケートの質問が、クロス集計に当てはまります。複数の異なる要素を互いに掛け合わせることで、詳細な分析を可能にします。その結果、飲食店が抱える強みや弱みを踏まえた店舗戦略の展開ができるようになるでしょう。
◎自由記述の集計
自由記述は、オープンクエスチョンの質問を対象にした文章による回答です。文章による回答ですが、性別・年齢・職業などの情報も併せて集計しましょう。
自由記述で書き込まれた結果は、類似の回答をカテゴリーに分類し、少数の選択肢を絞り込むアフターコーディングや、テキストデータからキーワードの出現率や特徴語を解析するテキストマイニングに活用できます。
アンケートを集計する手段
◎エクセル
アンケート集計にエクセスを用いる場合は、COUNTIFS関数を使うと良いでしょう。
COUNTIFS関数は、指定したセルの中で複数の検索条件に一致するセルがいくつあるかを求める関数です。例えば、「男性でサービスへの満足度が高い」といったように、属性と掛け合わせたクロス集計ができます。
上記の例を踏まえると、例えば、属性にサービスへの満足度に加え、支払った金額という3つの条件にすれば、3つの条件を掛け合わせた集計も可能になります。
◎集計ソフトやアプリを使う
より簡単にアンケートの結果を分析する目的がある場合、集計ソフトやアプリを利用しましょう。集計ソフトやアプリは、初心者でも気軽に使える設計が施されています。
また、集計ソフトやアプリには、回答データへの反映が早いだけでなく、設定次第で自動的にチャートが作成されるといった、ウェブツールにも使える集計機能は付いており、活用するのがオススメです。
まとめ:飲食店向けアンケートは回答しやすさを意識しよう
本記事では、飲食店がアンケートを実施する目的や、アンケートの形式、アンケートの注意点について解説してきました。
アンケートの実施は緻密な作業です。目的やゴールを定めた上で、アンケートを実行するツールを決めて、アンケートを実施する…。複数の行程を要する一方で、出た結果にバラツキが大きければ、アンケートが飲食店のサービスや料理の質を改善するためのフィードバックに直結する保証もありません。
そのため、お客が気軽に質問へ回答できるアンケートを作るという意識を常に持つことが大切です。回答するお客の立場に立ち、回収率が高いアンケートを作ることや、目的や予算に合ったツールを選ぶことを忘れてはいけません。
店舗改善やリピートの促進につながる飲食店向けアンケート。うまく活用し、売上アップにつなげていきましょう。