顧客満足度と同様に、最近では従業員満足度というワードも重要視されるようになってきました。
「顧客満足度は従業員満足度との相関性がある」と言われるようになって久しいですが、他用語との定義の違いや、向上させるメリットなどをお話ししたいと思います。
目次
従業員満足度の定義。従業員エンゲージメントやロイヤリティとの違い
従業員満足度(Employee Satisfaction)の定義についてご紹介します。
従業員満足度と類似したシーンで使われる言葉として、ロイヤリティや、
最近では従業員エンゲージメントという言葉も一般的になってきています。
各用語の定義は下記のようになっております。
従業員満足度(ES)
従業員が勤めている企業に対してどのくらい満足しているかをスコアリングしたものです。
ESは職場環境や人間関係、福利厚生などの要素から構成されています。
前述の通り、顧客満足度(CS)との相関があることが広く知られていると思います。
世界中でホテルを展開し、数あるホテルの中でもサービスの質の高さを誇る『ザ・リッツ・カールトン』が
『CSを高めるには、まずESを高めることが重要』と提唱し、広まったことをご存知の方も多いと思います。
(ザ・リッツカールトン/企業理念「ゴールドスタンダード」)
従業員エンゲージメント
企業と従業員の間で、『従業員の会社への貢献行動』『会社・組織からの従業員の貢献に報いる姿勢』
の2つが双方向の作用をもたらし、結びつきを強めている状態が『エンゲージメント』です。
従業員エンゲージメントを構成する要素は主に3つが提唱されています。
①働きやすい環境
②やりがいを感じられる状態
③企業のビジョンと個人のビジョンの一致
それにより、従業員の貢献意識が上昇し、パフォーマンスをより発揮出来ます。
1990年に当時ボストン大学の教授だったウィリアム・カーン氏が論文の中で
企業と従業員の結びつきについてエンゲージメントという言葉で表現したのがはじまりです。
(Questrom School of Business/profile WILLIAM KAHN)
ロイヤリティ
ロイヤリティとは忠誠心という意味を持つ言葉ですが、
HR領域で使われる際は、従業員からの会社への愛社精神や帰属意識を指しています。
上記2つの定義とは異なり、上下の関係が存在し、
従業員から企業への一方行の姿勢を示しています。
従業員満足度は従業員の就労環境について満足しているかを表すもの、
エンゲージメントは企業と従業員双方から作用している結びつきの関係性、
ロイヤリティは従業員の会社へのコミットメントを表しており、
それぞれ似ているようでいて異なる概念や事柄を表している用語です。
従業員満足度を高めるメリット
顧客満足度と相関性については触れてきましたが、
改めてESがCSにどのように作用するかお伝えします。
従業員の満足度が上がると、モチベーションが上がり、
高いパフォーマンスを上げるようになり、顧客からの満足度も上昇します。
その結果として企業収益性がアップするという
一連の流れは『サービス・プロフィット・チェーン』というフレームとして
ハーバード・ビジネススクールの教授たちによる論文「サービス・プロフィット・チェーンの実践法(Putting the Service-Profit Chain to Work)」として1994年に提唱されました。
従業員にとって、会社は仕事をただこなすための場所ではありません。
自分がどれだけ業績に寄与しているか、また自分が社会にどれだけ貢献できているかということも大変重要です。
従業員満足度が高い企業では、上司や同僚とのコミュニケーションが良好な傾向があります。
良好な人間関係の中では、上司や同僚が、自分の仕事に対する努力や成果を正当に評価してくれることでしょう。
周りの人から感謝される、評価されることで、自分の仕事に社会的意義を感じることができます。
快適な職場環境で安心して業務に取り組める可能性があるので、さらにやりがいを感じることができるでしょう。
従業員満足度から始まる一方向の作用ではなく、
収益性が上がることによって企業内部のサービス性をさらに上げることが出来、
さらなる従業員満足に繋がっていくことが特徴です。
従業員満足度向上に有効と言われている仕組み
ESは職場環境や人間関係、福利厚生などの要素から構成されることをお伝えしましたが、
具体的にはどのような項目が該当するでしょうか。
・経営方針
・組織風土・評価
・成長への寄与
・仕事内容
・報酬
・処遇
・福利厚生
上記のような内容が挙げられ、それらを整備することがES向上に繋がります。
上記の内容以外にも、以下の項目も重要です。
・業務の負担感
従業員の業務量をきちんと管理し、業務量が多い順に改革することが一般的と言われています。しかしながら、従業員満足度は主観的な実感でもあるため、「負担感」に着目した改革も重要です。
・公正感
人事評価などにおいて、「正当に評価されていない」「なぜあの人がばかり昇格するのか」などの不公正感があると不満につながります。
・労働条件・環境
給与が安い、職場の環境が良くないことも不満につながります。
・職場メンバーとの関係性
職場のコミュニケーションが取れない、職場内の人間関係が良くないなどの状態は不満につながります。
不満解消への取り組みは、心理的衛生に関わることです。不満が解消できたとしても、満足度の向上にはつながりにくいため、気づいたら早めに対策し、従業員の満足度向上に取り組むためのベースをつくることが重要です。
企業の従業員満足度向上の取り組み事例
各企業、ESを高める制度の整備に取り組んでいますが、
2020年現在進行している事例についてお話しします。
・Activ8株式会社
昨年末から世界中で感染拡大している新型コロナウィルスの感染拡大防止の観点から、
在宅勤務や時差出勤を実施する企業が多くなっていますが、
このような有事に対する企業の対応も従業員満足度に影響を与えています。
バーチャルタレントのプロデュース、コンテンツ開発・運用事業を行うActiv8株式会社では、
在宅勤務期間の従業員の満足度と生産性に関するアンケートを実施し、
双方において5段階中3以上が約9割となったことを受け、
働き方をアップデートしたいという趣旨で全従業員を対象とした在宅勤務を無期限化しています。
(株式会社 PR TIMES/PR TIMES『Activ8、全従業員を対象とした在宅勤務を無期限化』)
・大和リゾート株式会社
報酬や制度だけが従業員満足度に寄与するわけではなく、
業務負荷の軽減など仕事内容の見直しも従業員満足度向上につながるケースもあります。
国内の労働人口の減少に加え、新型コロナウイルスによる雇用調整が起き、
従業員の作業負担の増加が問題視されています。
大和リゾートでは、こうした業界課題に加え、自社社員の高齢化などの課題解決として、
清掃ロボットの導入を実施し、清掃レベルの向上、従業員負荷の軽減という、
CSとES向上を同時に叶えています。
(大和リゾート株式会社『Royal Hotel 那須 清掃ロボット導入実証実験を開始』)
「従業員満足度」の定義とは?メリットと実際の取組み事例まとめ
今回は「従業員満足度」の定義とは?メリットと実際の取組み事例について紹介しました。
従業員満足度は、職場環境や人間関係、福利厚生などの要素から構成されていて、従業員が自分の職場に対してどのくらい満足しているかをスコアリングしたものです。顧客満足度との相関があることが知られています。
顧客満足度を高めるには、まず従業員満足度を高めることが重要と言われ、様々な企業が色々な取り組みを行っています。
また、従業員満足度を上げることによるメリットもあります。
従業員の満足度が上がると、モチベーションが上がり、高いパフォーマンスを上げるようになり、顧客からの満足度も上昇します。それによって、収益性が上がり企業内部のサービス性をさらに上げることが出来、さらなる従業員満足に繋がっていくことが特徴です。
自社の収益最大化のキーポイントのひとつとして、
従業員の満足度を上げる取組みに着手してみるのはいかがでしょうか。
小さな一歩が業績拡大の近道になるかもしれません。