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社員の定着率を向上させる取組みとは?採用段階から入社後の対策

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  • hatena

日本では多くの企業で人手を確保することが困難になっています。また、働きづらさから離職するケースも増えており、せっかく採用できた人材の定着化も難しくなってきています。

今回は人材の定着率を向上させるために、知っておきたい採用段階からの取組み及び定着率を向上させる施策例を紹介していきます。

社員定着率が上がらない理由

社員定着率が上がらない理由

人材が定着しない理由

定着する人材を採用するためには、「社員が離職する理由」に関する企業側の課題について知る必要があります。

 

退職理由 割合 分類
1位 上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった 23.0% 人間関係
2位 労働時間・環境が不満だった 14.0% 環境
3位 同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった 13.0% 人間関係
4位 給与が低かった 12.0% 処遇
5位 仕事内容が面白くなかった 9.0% 仕事内容
6位 社長がワンマンだった 7.0% 人間関係
7位 社風が合わなかった 6.0% 環境
8位 会社の経営方針・経営状況が変化した 6.0% 環境
9位 キャリアアップしたかった 6.0% 自己都合
10位 昇進・評価が不満だった 4.0% 処遇

出所:リクナビNEXTより一部抜粋 転職理由と退職理由の本音ランキングBest10

 

リクナビNEXTがまとめたデータによると、退職理由で一番多いのは「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」が23%にものぼります。

さらに、分類を見てわかる通り離職する多くの理由は「仕事内容」ではなく「環境」や「人間関係」が一番の原因だということがわかります。

仕事内容は採用段階で知ることのできる情報ですが、社内の環境や人間関係というものは実際に働いてみないとわからない点も多く、社員が離職する最大の要因は「採用段階における人材と企業のミスマッチ」が起きていることになります。

ミスマッチを回避する採用で社員定着率を上げる

人材と企業側のミスマッチが起きる要因として考えられるのは、採用段階の取組み内容に課題があることが考えられます。

具体的には、企業側(/応募者側)はインターネット媒体や紙媒体で伝えられる(伝わる)企業情報が限定的で、「会社の環境」や「どういった人間がいるのか」という、働く上で本質的に重要な情報を伝える(伝わる)ことが難しいという課題です。

採用段階で仕事内容だけでなく、「社内の環境」や「人間関係」を把握してもらうためには、“面接”だけでは限界があります。選考過程において職場訪問の機会を設けることや、応募者のサポート目的としてリクルーター社員をつけるなどの工夫が必要になります。

 

採用におけるミスマッチ回避のイメージ図

 

採用段階から面接以外の労力がかかるので一見非効率と思えますが、入社前から個別に手厚いフォローを行うことで、入社前と入社後のギャップが少なくなり離職率は下がる傾向があります。

入社した人材が辞めて、新たに人材を確保し直す労力などのコストを考えれば非常に効率的かつミスマッチを回避できるというメリットがあります。

人材を選べない中小企業はどうすれば社員定着率があがるのか?

採用段階でミスマッチを回避する施策は応募者が多数集まってこその方法で、そもそも応募者が限定的な中小企業ではどのようにすればよいのでしょうか。

中小企業の人手不足状況

事業所規模別の新規求人数を確認すると2009年のリーマンショック以降、29人以下の企業で求人数が大幅に増えていることがわかります。

マーケティング手法 スタンプスブログ出典:中小企業白書2019_第4章人手不足の状況https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2019/PDF/chusho/03Hakusyo_part1_chap4_web.pdf/

さらに、雇用者数の推移では500人以上の規模の企業が右肩上がりで雇用者数を増やせている一方で、29人以下の企業は年々雇用者数を減らしていることがわかります。

従業者規模別非農林雇用者数の推移グラフ出典:中小企業白書2019https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2019/PDF/chusho/03Hakusyo_part1_chap4_web.pdf/

この2つのデータからも、中小企業では求人数は増えている一方で、人材の確保が難しくなっていることがわかり、中小企業における人手不足は深刻な課題となっています。

中小企業での対策法

深刻な人手不足と限定的な応募者という悩みを抱える中小企業にとって採用段階で人材を選ぶことは難しいといえます。一方でせっかく採用した人材がすぐに辞めてしまうことも避けなければなりません。

入社前の採用段階で選ぶことが難しい中小企業にとっては特に入社後に対策を取ることで定着率を上げていくことが重要になります。

離職理由の多くが「社内の環境」や「人間関係」に起因することから、その2つに着目して対策していく必要があります。

 

①「社内環境」

長時間労働が常態化している環境や休日出勤が頻繫にある環境といったように労働時間に関する環境が悪いと社員の不満は貯まりやすくなります。

また、シフト制を敷いていることにより休みが固定でない店舗型の企業も不満が高まる傾向があります。

また、長時間労働をしたのにも関わらず残業代がカットされていたり、不払いであったりすると、もっと労働条件のよい企業に転職するのは自然になります。

そのため、中小企業であっても「社員の働きやすさ」を求めて社内環境を変えていくことで、社員の満足度が高まり定着率が上がっていきます。

 

②「人間関係」

中小企業でよくあることは、社長との距離の近さや同僚の固定化されることです。社長との距離が近いがゆえに、ワンマン社長で「自分の考え=正しい」という考え方の場合は社員の士気は上がりにくい傾向にあります。

また、中小企業はメンバーが固定化されやすく、同僚との関係性も深くなりがちです。その一方で、人間関係が合わない同僚が近くにいる場合も、仕事は一緒に進めていかなければならず、精神的にはストレスが高い状況になります。

そのため、中小企業の場合は特にトップの人間が率先して社員同士のコミュニケーションが円滑に進むように工夫する必要があります。

トップ自らが動くことで、社内全体のコミュニケーションが活性化していき、居心地の良い職場になり結果として、定着率が上がっていきます。

社員定着率向上施策の例

最後に社員の定着率を向上させる施策例について紹介します。

定期的なフィードバック面談実施

社員の定着率を向上させる有効な施策の1つに定期的に「フィードバック面談」を実施することです。フィードバック面談とは1on1ミーティングとも呼ばれ、人事施策の一環で取り入れられることが多くあります。

これは上司・部下間で定期的なミーティングを行い、業務の目標管理や進捗管理のみならず、業務の課題や抱えている悩みを共有し、上司はフィードバックを実施することで、部下の成長を促進させる人事育成手法です。

 

社員定着率向上施策の例
 

フィードバックには部下のモチベーションを上げる目的もあることから、上司・部下間での定期的なミーティングを実施することにより、結果として会社への満足度も向上することから定着率を上げることに繋がります。

職場環境の改善(業務効率化と有給消化奨励)

職場の環境を改善することでも、社員の定着率向上には役に立つ施策となります。具体的な施策としては「業務効率化」と「有給消化奨励」の2つです。

業務効率化を実施する目的としては、残業時間を減らすことと社員の意欲を向上させることで、業務効率化の流れは次の通りです。
職場環境の改善(業務効率化と有給消化奨励)

  • 現状把握:社員の仕事を棚卸し、何にどの程度の時間が掛かっているのかを把握
  • 優先順位付け:棚卸した仕事に対して優先順位を付ける(下記参照)
  • 優先順位

    • 標準化:重要な仕事や出来る人が限られている仕事を重点的にマニュアル化
    • 業務の取捨選択:優先順位④の業務の中でやらない仕事を線引きする

     

    この流れで業務効率化を進めることで、会社全体として仕事を効率的に進めることができ、結果として残業時間の削減が出来ます。

    さらに、一度この流れが出来れば社員一人ひとりが定時内に仕事が終わるためにはどのように効率化を図ればよいかを工夫するので、社員の意欲向上にも繋がります。

    また、中小企業や店舗運営企業において最も重要点は「標準化」を進めていくことです。社員数が限られた中小企業や社員だけでなくアルバイトが多く在籍する店舗運営企業において、不満が貯まりやすい点は「仕事が出来る人に集中的に負荷が高くなる」という点です。

    属人に依存した仕事の進め方をやっていると、キーマンが離職してしまうだけでその企業が傾いてしまうこともあり得るので、誰がやっても同じ仕事レベルが再現できるようにマニュアル化を進めることが重要となります。

    コミュニケーションの活性化促進

    社内のコミュニケーションが活性化することで、定着率を上げる効果を期待できます。特に人数規模の限られた中小企業や店舗運営企業においては、コミュニケーションの活性化促進を図ることは非常に効果的な施策といえます。

    コミュニケーションを活性化させる具体的な施策は「ボトムアップ型コミュニケーション」と「コーチャー制度」の2点です。

    中小企業や店舗運営企業では社長や店長の意見を現場に浸透させるトップダウン型のコミュニケーションが取られがちですが、自分の意見を言えない社員は不満が貯まりやすくなります。

    そのため、トップダウンではなく定期的なミーティングを実施して社員の意見やアイデアを吸い上げるボトムアップ型コミュニケーションを導入することで、社員の満足度が向上し、結果として定着率の向上が期待できます。

    また、入社後の新人を手厚くフォローする一環として、新人一人につき一人の先輩社員を面倒見役としてつけるコーチャー制度を導入することで、新人の悩みや不安を吸い上げやすくなるので早期の離職防止に役立ちます。

    コーチャー制度の導入は新人を丁寧にフォローすることで定着率を上げることに役立つだけでなく、コーチャーとして接する先輩社員の自覚や責任感も芽生えさせることが期待できるため、一石二鳥の施策だといえます。

    社員の定着率を向上させる取組みとは?採用段階から入社後の対策まとめ

    今回は人材の定着率を向上させるために、採用段階からの取組みと定着率を向上させる具体的な施策例を紹介しました。

    採用段階でのミスマッチを回避することが定着率を向上させることには一番効果的です。採用段階から面接以外の労力がかかり非効率と思えますが、入社前から個別に手厚いフォローを行うことで、入社前と入社後のギャップが少なくなり離職率は下がる傾向があります。
    入社した人材が辞めて、新たに人材を確保し直す労力などを考えれば実は効率的かつミスマッチを回避できるというメリットがあります。
    人材不足を背景に人材を選べない中小企業や店舗運営企業においては、会社内部の対策に取り組むことで、定着率を上げることが重要になります。

    社員の定着率に悩まれている企業は、ぜひ今回の内容を参考にしてみてください。