日本を訪れる外国人旅行者(インバウンド)が今後のビジネスにおいてますます目が離せない存在となっています。2015年10月に日本政府観光局(JNTO)が発表したデータによると、訪日外客数は2015年の9月時点で、2014年に記録した1,341万人を超す1,448万人に達しています。
訪日前の観光情報はネット上の動画を参考に
そこで今回は、Web動画制作会社「モバーシャル株式会社」の訪日アメリカ人を対象にした調査データをもとに「訪日外国人旅行者は日本を訪れる際にどのような情報を参考にしているのか?」をご紹介していきたいと思います。
訪日前に参考にした情報源についてアメリカ人に質問したところ、情報源ベスト5にインターネット上の情報(SNS:2位、個人のHP:3位、ネット動画:5位)が3つもランクインする結果となりました。また、日本政府観光局のホームページが6位に入っていることからも、多くのアメリカ人がネット上の情報を参考にしていることがわかります。
出典:markezine 訪日アメリカ人の多くがネット上の情報を参考に/日本食や日本文化の動画が人気【モバーシャル調査】
情報収集のため、訪日前にネット動画を見たことがあるアメリカ人300名に、ネット動画が実際に役に立つかどうか質問したところ、96.6%の人が「役に立つ」と回答しています。さらに、その内「とても役に立つ」と回答した人は66%と、過半数を超える結果となりました。
出典:markezine 訪日アメリカ人の多くがネット上の情報を参考に/日本食や日本文化の動画が人気【モバーシャル調査】
外国人観光客向けの日本観光動画は、「日本人が知らない日本の面白い情報」を知ることができると、日本人がアクセスするケースもあるようです。柴犬が客を出迎えてくれる東京・武蔵小金井のたばこ店に、外国人観光客が大挙して訪れるようになったのも動画が発端といわれています。
「日本食」「日本文化」などの観光動画が人気
情報源として参考にしたネット動画について質問したところ、「日本の食事について」が、訪日前(74.0%)、訪日中(69.3%)と両時期とも最も多く、「日本の文化について」が訪日前(71.6%)、訪日後(63.3%)となりました。
出典:markezine 訪日アメリカ人の多くがネット上の情報を参考に/日本食や日本文化の動画が人気【モバーシャル調査】
次回訪日するときに視聴したい動画(訪日前・訪日中)について質問したところ、「文化」に関する動画を訪日前に、「食事」に関する動画を訪日中に視聴したい傾向が見られました。「日本食」については、2013年12月「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことでより一層ブームは加速しています。
また、訪日中では「現在地から近くで楽しめるアクティビティ」に関する動画やハウツー動画など、リアルタイムな問題を解決してくれるような情報を求めていることも判明しました。具体的な回答としては、「文化、マナー、エチケットについて」「どのようにアメリカ人が見られているのか」「基本的な日本語会話」「どのように交通機関を使えばよいのか」「神社、寺、博物館、遺産、エンターテインメントなど見るべき場所を紹介している動画」などがあげられています。
詳しく知りたいことを、映像と音でわかりやすく説明してくれる動画が求められているようです。
出典:mobercial 食”と“文化”が2大キーワード!?訪日経験のあるアメリカ人の“5つ”のネット動画閲覧実態が明らかに! 『モバーシャル調査』
日本政府観光局(JNTO)も日本観光動画チャンネルを開設
日本政府観光局(JNTO)も、2008年6月30日に日本観光に関する動画チャンネル「Visit Japan Channel」を開設しています。
これは、世界最大の動画サイトであるYouTubeに、日本の観光魅力を動画で発信する公式チャンネルを設けるもので、すでに海外では、香港、インド、ニュージーランドなどの各政府観光局がYouTube上に同様の動画サイトを設け、観光プロモーション活動を行っています。地方公共団体などの事業パートナーから受領した観光プロモーションDVDの有効活用方法として、動画チャンネルを開設することになったようです。
当初、ビジット・ジャパン・キャンペーンのプロモーション・ビデオをはじめ、北海道の自然の魅力などのビデオを発信。当面は、使用許諾を得ている動画を中心に公開していく計画とのことでしたが、動画チャンネルへのアクセス状況を見ながら、動画の提供範囲を広げていくとのことです。
今後、動画の拡充を図るとともに、JNTOウェブサイトに掲載されている関連地域の詳細情報と相互にリンクを張ることで、日本観光宣伝に関する相乗効果を図っていくようです。
観光動画配信のメリット
観光情報を伝える動画のメリットは、言葉に依存する必要がなく、映像や文字さらには音楽を合わせることで魅力を伝えることができ、写真や文字などの静止画に比べると、届けることのできる情報量も非常に多いという点です。インバウンドで日本を訪れる外国人旅行客は、それぞれ母国も違うので使用する言語も異なります。
そのため、パンフレットで多言語に合わせて制作するのは大変ですが、動画であればその心配もありません。動画は、視覚的な訴求力があるため、字幕やナレーションが母国語ではない場合でも、文字のみの訴求と比較すると、より幅広い国籍の視聴者に向けたコンテンツの理解促進につなげることができます。
また、動画は世界中の人たちに利用されているFacebookやTwitterによって拡散されやすいという特徴もあります。動画がリツイートされたりシェアされたりすることで、国籍問わずより多くの人に動画を見てもらえる機会が生まれます。さらに、SNSの媒体によっては自動再生機能もあるのでユーザーの目に留まりやすいという特徴もあります。
観光動画は、拡散力の高いSNSと動画を組み合わせることで、より一層インバウンドの集客を期待できるツールになるのです。
観光動画の活用
観光動画のメリットがわかりましたが、自社でオリジナルのインバウンド向けの動画を作成するとなると、専門スキルもなく予算も厳しいという場合もあるかと思います。そのような問題のヒントとなるのが、京都の清水寺が公開している動画です。
そこには、ナレーションなどの「説明」が一切なく、全て音楽と映像だけで構成されており、「いかにお寺の雰囲気を伝えるか」に重点をおいています。
外国人にお寺や神社のすばらしさを伝えたいときは、凝ったものではなく、このようなシンプルな動画が一番わかりやすいのかもしれません。
その他、自社のサービスの紹介動画をオリジナルで作成しホームページなどに公開するのが難しい場合には「日本で食事をする時のマナー」や「自分のお店のあるエリア内の観光スポットの紹介」など自分のお店に関連し、訪日外国人旅行者の方の役に立ちそうな既に公開されている動画をリンクする許可をもらい自社のホームページ内で掲載するなどから始めるのも有効と考えられます。
また、実際にお店を訪れる外国人のお客様に対しての「他言語メニュー」や「他言語で対応できる接客サービス」などの対応を同時に進める事も大切になってきます。
今後も増えてくること間違いないインバウンドビジネスの機会を逃さないようにするためにも、インターネット上での動画を活用してみてはいかがでしょうか?