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宝飾品販売店サダマツにみる訪日中国人客取り込み事例

OMO
  • hatena

宝飾品販売店のサダマツでは中国人向けに新しい取り込みを始めています。

中国のSNSや旅行代理店と組んで、訪日客向けに情報発信や集客策を始めているほか、店頭では訪日客に向けてスマホを使った決済サービスを導入し、買い物のしやすさを強調して売上げアップを図っています。

「爆買い」する訪日中国人客を取り込もう

インバウンド観光客、中でも訪日中国人客を取り込むための施策が、注目されています。

「外から中へ」という意味を持つ「インバウンド」は、外国人の訪日旅行を指す言葉として定着しています。日本の少子高齢化の波は、市場の縮小にも多大な影響を与え、もはや国内に限って経済発展を望むことは難しくなってきました。

これに伴い、高い経済効果の期待できるインバウンド消費の争奪戦が各所で繰り広げられています。外から中へ、顧客を流入させ、循環させる工夫が必要とされています。

2015年にはインバウンド観光客の消費行動を表した「爆買い」が流行語に選ばれるなど、社会現象となっています。中でも、インバウンドビジネスの主要なターゲットとされているのが「訪日中国人客」です。

電化製品や化粧品、宝飾品を「爆買い」する彼らの姿を、ニュース映像で目にすることも珍しくなくなりました。

店頭のみならず、Web上のSNSの活用や、新たなシステムの導入による多様な試みによって、時代の変化に対応していかなければ、競合他社との競争に勝ち残ることはできません。来店時の「言葉の壁」を乗り越えるような、顧客目線での買い物のしやすさの追求も、大切なテーマです。

まずはこの「決済」のフェーズに焦点を当てたサービスをご紹介します。

訪日中国人客の決済を手軽に!「WeChat Payment」とは?

中国のインターネットサービス大手、テンセントホールディングスの決済サービスを展開するグループ企業であるテンペイは2015年7月10日、スマートフォンを用いた決済サービス「WeChat Payment(中国名:財付通)」を日本に正式導入すると発表しました。

WeChat Payment

「WeChat Payment」は、2013年にスタートしたサービスで、中国国内で手軽な決済方法として急速に普及しており、2015年6月現在で中国全土の4億人が利用可能なサービスに成長しています。中国ではモバイル決済の利用も年々増加しており、特に20~30代の若年層では広く親しまれています。

「WeChat Payment」は、来店者が店頭での決済時にスマートフォンの「WeChat」アプリを起動させ、アプリ内でQRコードを表示、店舗側はあらかじめ決済用アプリをインストールしたiPad端末のカメラでこのQRコードを読み取り、支払いを確定させるという決済方法です。

中国では一般的な買い物スタイルを、日本の店舗に導入する事で訪日客を呼び込もうという考えです。また、店舗側は管理画面から「WeChat Payment」による支払い履歴を管理することができます。

SNSとの連動で訪日中国人客の囲い込みを

「WeChat Payment」を利用した決済方法は、中国を中心に7億人が利用しているのSNS大手「WeChat(微信)」と連動したサービスとなっているため、「WeChat」内の公式アカウントで、常時フォロワーに対する情報発信がされています。

「WeChat Payment」決済を利用する際に、決済企業の公式アカウントをフォローすることを勧めるメッセージを表示させ、広告としても機能する仕組みになっています。「WeChat」公式アカウントでは、店舗の場所や連絡先の基本情報をはじめ、お得なクーポンを提供したり、ブランドWebサイトへ誘導したりと、さまざまなマーケティング施策を展開することもでき、フォロワーが自分の友だちに情報をシェアすれば、新規顧客の輪を広げていく事も出来ます。

決済のしやすさを入り口にして、SNSとの連動により、情報発信・広告ツールとしても活用できる、顧客と企業の双方にメリットのあるサービスと言えます。

また7億人規模のSNSともなれば、その拡散力は凄まじいものと予想されます。ここで、「このお店はサービスが良い!」「他にはないお得なクーポンをもらえた!」と、良質なイメージをシェアしてもらうことができれば、多大な宣伝効果が見込めます。

訪日中国人客に向けた、宝飾品販売店「サダマツ」での取り組み

2015年4月にオープンした「ドゥミエール ビジュソフィア イオンモール沖縄ライカム店」にて、
訪日客向けに、スマホをつかった決済サービス「WeChat Payment」を導入しました。

宝飾品店「サダマツ」出典:イオンモール沖縄ライカム店

導入に際して、上記のSNS「WeChat」や中国版ツイッターの「ウェイボ」を通じて商品情報の配信をスタート。来日にて店を訪れるとプレゼントがもらえるキャンペーンなども行い、知名度を高めています。

240万人が訪日、旅行支出は一人当たり約23万円

2014年に日本を訪れた中国人は約240万人。旅行支出は一人当たり約23万円で他国と比べても高くなっています。

訪日中国人

その恩恵で国内では宝飾品などの高額商品の売り上げは好調でしたが、真珠のミキモトなど中国で認知度の高いブランドに人気が偏っていました。

サダマツでは、上記のような訪日客向けの取り組みにより、百貨店の店舗を中心に外国人客が増え、5月の外国人売上高は前年同月比で約4倍。都心の店では売上高の約2割を外国人が占めています。

今後は、スマホ決済サービスの導入でさらなる集客が期待できます。

中国向けのネット通販も開始

また、サダマツは日本を訪れる外国人客だけでなく、ウィーチャットで日本の商品を扱う通販サイト「微購物日本館」で、主力の星形のダイヤモンドを使ったネックレスなど自社商品を発売するなど中国向けのネット通販も始めました。

国内の宝飾品市場は2014年が9726億円。90年代初めの3分の1以下に縮小したが、ここ数年は訪日客の増加などで回復しており、19年には1兆円を超えるとの予想もあります。サダマツによればダイヤモンドの国別購入額は中国が約5年前に比べて5ポイント高い15%。90年代には珍しかった婚約指輪も今はカップルの約3割が購入しています。

サダマツでは中国の富裕層を日本でも中国でも垣根なく取り込む事で活路を見出そうとしています。

今後も訪日中国人客に向けた販促施策に注目すべき

宝飾品販売店「サダマツ」の試みた、訪日中国人客の来店および販売促進策として、決済の利便性を飛躍的に向上させる「WeChat Payment」や、SNS「WeChat」や中国版ツイッターの「ウェイボ」を活用した情報発信・リピート率向上を図る広告手法、中国向けのネット通販の展開についてご紹介してきました。

SNSや新たなシステムを積極的に導入し、ブランドの良質なイメージや、買い物のしやすさをアピールし、「爆買い」の対象となるために是非、参考にしていただければと思います。

東京オリンピック開催の延期など、何かと予期せぬ事態が続く昨今においても、国内外の垣根を越えた市場拡大が重要であることに変わりはありません。

今後も訪日中国人客に向けた販促施策に注目していきましょう。