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ライフタイムバリュー(LTV)とは?導入のメリットや事例を解説

マーケティング
  • hatena

企業活動における重要な指標である「ライフタイムバリュー」。一度や二度は聞いたことがあっても、詳しい意味までわからないという方も多いのではないでしょうか。

本記事では、ライフタイムバリューについて詳しく解説します。自社でライフタイムバリューについて考えるきっかけとして、ぜひ本記事をお役立てください。

ライフタイムバリューとは

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ライフタイムバリュー(LTV)とは、日本語で「顧客生涯価値」という意味をもつ用語です。一人の顧客がその商品の取引開始から取引終了までにどれくらいの金額を払ったか、を指します。一般的には売上金額となりますが、企業によっては「利益」でLTVを示すケースもあります。

LTVが注目されている背景には、顧客とのより良い関係構築を目的としたマネジメント方法である「CRM」との関係があげられます。CRMでは、その顧客に対する情報をもとに効率的なアプローチを実施します。CRMでの結果が「どれくらいの金額を支払ってくれたか」というLTVの計測につながるのです。

顧客ロイヤリティ(顧客からの愛着)の高い企業ほどライフタイムバリューは高くなりやすく、競争の激しい市場においても「いかに顧客にリピートしてもらうか」は企業にとって重要なポイントとなります。また、新規顧客も獲得しやすくなることから、市場における顧客シェアを維持・拡大できるのです。

そうしたことから、最近では「一人の顧客から商品・サービスに対して最大限お金を支払ってもらうにはどうすれば良いか?」といったライフタイムバリューの最大化」を目指す企業が増えているのです。

ライフタイムバリューを高めるメリット

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ライフタイムバリューを高めるメリットについて見ていきましょう。具体的には以下の2つがあげられます。

  1. 利益の安定化が狙える
  2. 顧客との信頼関係が強くなる

利益の安定化が狙える

1つ目のメリットは、「利益の安定化」を狙える点です。

ライフタイムバリューが高い状態というのは、すなわち「顧客が継続的に商品・サービスを購入している状態」といえます。これは店舗運営でいう「リピーター」のことです。一人の顧客が同じ商品を何度も購入してくれることで、会社の利益が安定します。その結果、資金を新規顧客獲得のために回せるようになり、会社の経営体力向上にもつながるのです。

顧客との信頼関係が強くなる

2つ目のメリットは、「顧客との信頼関係が強くなる」という点です。ライフタイムバリューの高い企業には「ファン」とも呼べる顧客が数多く付いています。

ライフタイムバリューを高めたいと思ったら、まず「いかに顧客を喜ばせるか?」という視点で商品・サービスを提供しなければなりません。ライフタイムバリューを中心に商品・サービスを開発すると、常に顧客ファーストで物事を考えられるようになります。その結果、一人ひとりの満足度が向上し、顧客から「この会社なら安心してお願いできる」と思ってもらえるのです。

ライフタイムバリューの計算方法

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ライフタイムバリューは数字として算出することができます。計算方法は以下のとおりです。

ライフタイムバリュー(LTV)=平均購買単価 × 購買頻度 × 継続購買期間

  • 平均購買単価:商品・サービスの価格
  • 購買頻度:顧客が1年間に商品・サービスを購入している頻度
  • 継続購買頻度:顧客がその商品・サービスを何年間購入し続けているか

 

たとえば、客単価10,000円のフィットネスジムがあったとします。定額制のため月1回の支払いがあり、年間10%の顧客が離脱すると想定しましょう。

その場合の計算式は以下のようになります。

  • 平均顧客単価:10,000円
  • 購買頻度:12回
  • 継続購買期間:1 ÷ 0.1 = 10年

10,000 × 12回 × 10年 =1,200,000

このフィットネスジムのライフタイムバリューは「1,200,000円」となります。つまり、新規顧客が一人増えるごとに年間売上が1,200,000円増えるということです。

年間1,200,000円というのは非常に大きな数字です。経営においては、つい既存顧客よりも「いかに新規顧客を増やすか」ばかりを考えてしまいがちです。しかし、それよりも「いかに既存顧客を満足させるか」を優先して考える方が、売上アップへの近道となるのです。

ライフタイムバリュー戦略の事例

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それでは最後に、ライフタイムバリューの事例をいくつかご紹介します。

KIRIN Home Tap

KIRIN Home Tapは、毎月2回ビールが届くサービスです。「タンクから、グラスへ。」というコンセプトのサービスで、キリンから消費者の自宅へ直接ビールが届きます。予約待ちが発生するほどの人気ぶりで、「顧客のファン化」につながっています。

ライフタイムバリュー最大化のポイント

  • 消費者の「新鮮なビールを飲みたい」という欲求を満たした
  • 定期的にビールが送られてくるため「買い忘れ」の心配がない
  • 会員だけが飲める限定ビールを送ることで消費者に「特別感」を与えた

おいしいビールを提供することはもちろん、消費者に「自分だけ」という特別感を与えることで、顧客満足度アップにつなげています。顧客のファン化によって収益も安定化し、ライフタイムバリューが最大化された事例といえるでしょう。

コーチ・ユナイテッド

コーチ・ユナイテッドは、英会話やカメラなどのプライベートレッスンを提供する「Cyta.jp」を運営する会社です。同社では「ライフタイムバリューを軸とした広告運用」を実施。リスティング広告やディスプレイ広告、SNS広告などをライフタイムバリューで評価することで、コンバージョン獲得につなげています。

ライフタイムバリュー最大化のポイント

  • 同じジャンルでも「写真教室」「カメラ教室」など提供するサービスのキーワードを細分化した
  • 「趣味としてカメラを楽しみたい」「カメラの技術を身につけたい」などユーザーニーズを細分化した
  • キーワードとユーザーニーズが「マッチ」している分野のライフタイムバリューが高いことを特定し、Web広告を最適化した

サービスの内容が直接的にライフタイムバリュー最大化につながった、というより「ライフタイムバリューを細かく理解することで、顧客へのアプローチを最適化した」という事例といえます。ニーズを細かく分析すると、「どんな人が、どんなことを求めて、どう行動したいのか」が明確になります。そこに最適なWeb広告を打つことで、サービスの集客につなげているのです。

ライフタイムバリューについてのまとめ

ライフタイムバリューについてのまとめ イメージ画像

本記事では、企業活動において重要な指標である「ライフタイムバリュー」について解説しました。ライフタイムバリューを高めることは、顧客の「ファン化」に貢献し、結果として企業における経営安定化につながるのです。

お伝えしたように、顧客に対して「特別感」を与えることでライフタイムバリューを最大化させた企業や、ライフタイムバリューを評価の基準とすることで広告を最適化させた企業など、ライフタイムバリューの向上によって売上が好転した企業もあります。

新規顧客にばかり目を向けることも大切ですが、今いる「既存顧客」にフォーカスすることこそ売上アップの鍵となるのです。ぜひ本記事の内容を、自社の経営にもお役立てください。