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徹底的な顧客目線がカギ!アプリで実現するマーケティング手法OMO

OMO
  • hatena

O2O、オムニチャネルに各企業がやっと対応したところで、新たにOMOが登場しました。
今なぜOMOなのでしょうか?OMOによって企業や私たちの生活はどう変わるのでしょうか?
アプリでOMOを実現するというのは可能なことなのでしょうか?これからその答えを探って参りましょう。

アプリでもできるOMOとは?

アプリでもできるOMOとは?
OMO(Online Merges with Offline)とは、オンラインとオフラインを融合させるという考え方です。

今このOMOが注目を浴びているのは、その考え方が企業目線ではなく徹底した顧客目線にあるからなのです。
OMOは2017年9月頃に、現在シノベーションベンチャーズを率いる李開復(リ・カイフ)氏が提唱した言葉です。
李開復氏は、オンラインとオフラインが融合した社会をOMOと呼び、「ECからO2Oに変わった世界からさらに進化した次のステップであると述べています。

このOMOが最も進んでいる国は中国でしょう。中国ではいち早くスマートフォンが普及し、その活用が進んでいます。

『スマートフォンがあれば、ほとんどの事ができてしまう世界』をOMOと考えれば理解しやすいでしょう。

関連記事:店舗もネットも進化する新しいマーケティング概念「OMO」とは?

 
中国を訪れてみると、それを実感することができます。
中国人は生活の多くの部分でスマホを利用しています。
スーパーでの買い物決済、タクシー利用、友人への送金、自販機での買い物も、すべてスマホで行えます。
現金どころか、キャッシュカードも電子マネーも不要です。スマホが1台あればこと足りるのです。

中国では、ホームレスまでスマホを使っていると言われますが、それほどスマホは生活必需品なのです
中国ではリアルの世界とオンラインが常時接続されており、顧客の目線からはネットとリアルの境界線が見えません。
OMOの深化によって、中国ではいち早く無人スーパーや無人レストランが出現しています。
顧客は無人店舗で、ネットショッピングと同じ感覚でスマホをかざして入店し、最後にスマホで決済をします。
もはや中国ではOMOが生活に溶け込んで「当たり前」になっており、OMOという言葉すら使われなくなっています。

 

OMOとO2O、オムニチャネルとの違い

O2Oは「Online to Offline」の略で、オンラインの情報によって、実店舗(オフライン)での購買行動へ導くマーケティング戦略のことです。

たとえば、オンラインショップでクーポンを顧客に発行し、それを顧客が実店舗で使います。
あるいはスマホの位置情報を利用して、セール情報などをプッシュで顧客のスマホに配信し、顧客を店舗に誘導します。

これらがO2Oです。
このO2Oの次の段階としてオムニチャネルという考え方があります。

オムニチャネルは購買という視点から、オンラインを活用して販売や流通チャネルをシームレスに統合し、顧客が購買チャネルを意識せず、商品をネットや実店舗を意識せずに購入できる姿を目指しています。
かなりOMOと考え方が近いように見えますが、ここでも目線はあくまでも企業側です。
OMOはこれを更に進化、深化させた姿で、顧客目線であるということです。

 

OMOをアプリで実現する

OMOをアプリで実現する
O2O「Online to Offline」ではインターネット(オンライン)を活用して、顧客を店舗(オフライン)での購買行動に誘導することを主としていました。

続いて登場したオムニチャネルでは店舗やWEBサイトなど、あらゆる販売チャネルを統合し、顧客はそのチャネルを意識せずに商品を購入することができるようになりました。
オムニチャネルで顧客と企業の接点となったのは、スマホで利用されるWEBや専用アプリでした。

顧客は常時携帯するスマホを利用して、購買チャネルにアクセスします。店舗や商品や、クーポンといった情報をスマホから得て、実際の商品を店頭で確認し、ネットで購入するといった購買行動が当たり前のようになっていきました。

OMOでは更にこれらが進化し、購買以外のあらゆる体験(UX)もスマホを通して行えるようになります。

 

OMOによる近未来体験

例えば食品スーパーに買い物に行くという想定でOMOを見てみましょう。
今日、あなたはAスーパーに買い物に来ました。店に近づくと、スマホに本日のお買い得情報、クーポンが届きました。
美味しそうな春キャベツが特売になっています。春キャベツの電子プライスタグをスマホでスキャンすると、スマホに生産者が表示され、有機栽培で、今朝収穫されたものだと分かりました。

スマホに表示されたレシピのボタンをクリックすると、「豚肉とキャベツの味噌炒め」のレシピが表示され、他にピーマンと豚バラ肉の買い物を促されました。
キャベツに貼られたプライスシールをスキャンすると、スマホのレジアプリが購入額を自動的に計算してくれます。同様に他の商品も何点かカートに入れました。
買物が済み、無人レジでスマホをかざすと買い物金額が表示されました。そこで支払方法としてスマホ決済を選び、精算すると買い物レシートがスマホに取り込まれました。
少し買い過ぎたので、購入した商品を配送してもらうことにしました。
Aスーパーでは買い物金額3,000円以上なら配送料無料です。

 
スマホの電子レシートを確認し、配送してもらう商品にチェックを付け、送信ボタンを押しました。
サービスカウンターに行き、スマホをお店のモバイル端末にかざすと、店員がプリンターから印字されたピッキングリストを見ながら、カートから配送商品を取り出しました。
それらを配送カゴに入れ、ピッキングリストと同時に印字された配送シールを配送カゴに貼りました。

後は夕方の指定時間に商品が自宅に配送されるのを待つだけです。
 

買物の後、即時にスマホの電子家計簿が自動更新されました。

電子家計簿アプリは自分が購入したものを、過去に遡って簡単に検索できるので大変便利です。

このアプリは消耗品などの購入商品と購入頻度から消費量を割り出し、買物が必要な時期になると、買物推奨リストに表示してくれます。これで、買い忘れて醤油を切らすといった心配はなくなりました。

 

このAスーパーは大手通販サイトとも提携しており、このサイトで商品を購入すると、たまったポイントをAスーパーでも使えます。Aスーパーのクーポンは通販サイトでも使えるのです、とても便利です。

 

最近はスマホのビデオアプリを使って近所のクリニックがオンライン診療してくれます。診療の後、電子処方箋がクリニックから薬局に送られ、薬局は処方薬を自宅に届けてくれます。

このようにOMOはどんどん進化し、生活のあらゆる局面で利用されていくでしょう。
以上、OMOが実現する世界を描いてみましたが、これらは絵空事ではありません。

クラウド環境と、スマホとアプリがあれば全て実現できることです。

 

顧客目線(OMO)でアプリをつくる

顧客目線(OMO)でアプリをつくる

企業側は顧客目線で物事をとらえ、顧客の意識や行動を前提に立てば、OMO的な発想にたどり着きます。
後はアプリを用いてOMOを具現化していけばよいのです。

 

OMOによって、企業は顧客に最高のCX(顧客体験)を味わってもらい、それをブランドロイヤルティにつなげて固定客づくりを進めることができます。
OMOではCXもデータとして取得できます。

POSで何が売れたかを把握するのではなく、顧客の行動まで把握できるのです。

 

「キャベツを買った客の3割がレシピを見て、夕食のおかずにホイコーローを選んだ。
キャベツを買った客の7割がピーマンを買い、5割が豚バラを買った。」

こんなデータも簡単に取得することが可能となります。

顧客の購買行動を予測できれば、より顧客のニーズにあった品揃えやサービスの提供が可能になります。
集められたデータからAIが最適な発注もしてくれるでしょう。

こうしてOMOによって無駄やロスがなくなり、企業の収益率は向上し、環境にも貢献します。

OMOは企業にも顧客にも最適解をもたらすのです。

 

今後、OMOをアプリで実現しようとする動きは急速に高まってくるでしょう。
その時に鍵となるのは、キャッシュレス決済です。

キャッシュレス決済からモバイルペイメントへの移行です。
日本のキャッシュレス決済比率は世界でも最低クラスの20%前後。一方、OMO先進国の中国は60%を超えています。
中国の都市部ではAlipayやWechatによるモバイル決済が当たり前になり、現金決済が極端に減っています。

日本は経済産業省が旗振りをして、2025年を目途に日本のキャッシュレス化率40%達成を目指しています。
日本にOMOが普及し始めるのも間近でしょう。

アプリでOMOを実現している事例

それでは実際に、アプリを用いてOMOを実現している事例を見てみましょう。

 

アリババのHema

マーケティング手法 スタンプスブログ出典:https://www.freshhema.com/

中国最大のIT企業であるアリババが2018年にオープンさせたHemaというスーパーマーケットがあります。
Hemaは現在、年間100店舗の勢いで中国全土に向けて店舗展開中です。

 

Hemaはオンラインとオフラインを融合させ、レストランや物流機能まで兼ね備えた複合型スーパーマーケットです。
このHemaでは、顧客が入店してから買い物をし、退店するまでの全てのことがアプリで完結します。

顧客は買い物時にプライスカードである電子タグのバーコードをスマホで読み取り、必要に応じて産地やセール情報、調理方法、口コミを確認し、専用の無人レジで支払います。
もちろん支払いもスマホ決済、Alipayです。

店内のレストランもスマホ注文、AIが注文品を各席にデリバリーします。この店の商品はオンライン注文も受け付け、ピッキングされた商品は専用バッグに入れられ、天井に設けられたモノレールで配送施設に移送され、無料で宅配されます。

他にHemaでは生け簀で販売されている鮮魚などを店内調理するサービスも提供され、CX向上にも力を入れています。Hemaはオフラインとオンラインの購入比率が半々で、商品回転率は高く、鮮度の良い商品がさらに顧客を引き付けます。

 

GU STYLE STUDIO原宿

GU STYLE STUDIO原宿はユニクロの姉妹ブランドである「GU」が2018年11月に原宿にオープンさせた次世代型店舗です。

マーケティング手法 スタンプスブログ出典:https://www.gu-global.com/jp/ja/feature/gustylestudio/pc/

この店はユニクロが目指すOMOの実験店となりました。この店を利用する際、顧客はGUアプリをダウンロードしておくと便利です。

この店は、店内で一部の商品は購入可能ですが、基本的には展示や試着がメインです。
顧客は気に入った商品があると、専用アプリで商品タグのQRコードを読み取り、お気に入り登録し、のちほどスマホからオンライン注文します。

店内設置のデジタルサイネージではアバターに好きな服を着せて、バーチャル・フィッティングをすることができるようになっています。そこでは思い切った組合せのフィッティングも楽しめるようになっています。
この店はショールーム機能がメインで、在庫リスクがありません。また限られたスペースで展開できるため、出店コストも抑えられ、人件費も抑制できるでしょう。

オンライン注文をする顧客にとっても、現物に触れたり、試着をしないと不安だという人には便利です。
以上、OMOの事例をご紹介しました。

 

アプリで実現するOMOまとめ

OMOはオンラインとオフラインの境界線をなくし、相互に補完しあう新しい施策です。スマホのアプリを通じて、企業と顧客の接点が圧倒的に増加し、UX向上やCX向上に大きな効果が期待できます。
今後ますますOMOによって顧客本位の新しい生活スタイルが定着していくことでしょう。

近隣の中国はすでにOMOの最先端を進んでいます。スマホさえあれば大抵のことはできてしまうのです。海外と比べればまだまだ遅いと言われている日本でも、キャッシュレス決済などが少しずつ普及し始めています。

それらを実現するのはスマホと、スマホで動作するOMOのアプリなのです。
OMOは我々の生活からムダやロスをなくし、よりスムーズな暮らしを実現してくれることでしょう。