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店舗経営・ブランド運営におけるDXとは?DXで企業価値を高める

顧客エンゲージメント
  • hatena

2025年までにDXを強化することが、競争力を維持しデジタル化競争で敗者とならないための唯一の方法です。そこで本記事では店舗経営・ブランド運営におけるDXとはどのようなものか、店舗運営事業者がDXを強化するために必要なこと、DX強化を行った店舗事業者の事例を紹介していきます。

店舗経営におけるDXとは

店舗経営におけるDXとは

エリック・ストルターマンの定義

DXは「Digital Transformation(Trans=X)」の略称です。2004年にウメオ大学(スウェーデン)のエリック・ストルターマン教授が「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」として提唱しました。

経済産業省のDXの定義

エリック・ストルターマンの提唱するDXの概念を日本の経済産業省は「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」において「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と再定義しました。

店舗経営におけるDXとは

ムーアの法則における予測スピードを超える勢いで進化するテクノロジーを導入して新たなビジネス価値を創出し、顧客のエンゲージメントを高めることです。そしてその結果として企業価値を向上させます。ただ注意が必要なのは、店舗のレジを無人レジに変えるといった業務効率化を主眼とした局所的なテクノロジーの導入ではDXとはいえないことです。店舗運営事業者がDXを強化するためには、より根本的で広範な対応が必要になります。

店舗運営事業者がDXを強化するために必要なこと

店舗運営事業者がDXを強化するために必要なこと

ビジョンの共有

店舗運営事業者がDXを行う目的は、業務改善・効率化のみにとどまらず、「顧客視点で新たなビジネス価値を創り出すこと」です。経営者の理解がないまま「AIを使って何かできないか?」と曖昧な指示を出された担当部門がAIの導入に対する概念実証のみを繰り返した結果、IT費用への投資を少し増やしても、DXが実現しないという企業は少なくありません。これは顧客体験においてどのような価値をテクノロジーで生み出すのか、つまり「What」が語られずに「How」から入ってしまっているからです。

危機感の共有

DXにはビジネスモデルや仕事の仕方など、企業文化そのものの変革が必要になります。しかし大きな変革に対して現場の抵抗は強いです。現場の抵抗を乗り越えてDXを実現するためには「なぜDXをするのか」「変革しないと何が起こるのか」について具体的な危機感が経営層と現場に腹落ちしている必要があります。そのためにはDXを推進しないことによる企業価値低下の危機感が共有されており、社員が当事者意識を持っていることが重要です。このような失敗を防ぐためにはDXを進めるうえで、顧客視点でどのような価値を生み出すのかについてのビジョンとビジョンを実現するための経営戦略を明確化し、社内外で共有する必要があります。

経営トップのコミットメントにより店舗DXを強化

経営トップのコミットメントにより店舗DXを強化想定されるディスラプションに念頭を置き、データとデジタル技術を使って、どの事業分野でどのような新たな価値(新ビジネス創出、即時性、コスト削減など)を生み出せるのか?そのために、どんなビジネスモデルを構築するかについての経営戦略やビジョンの提示を行います。DXを推進するには、イノベーションを起こすために挑戦を積極的に評価する組織風土の醸成、データやデジタル技術の活用の取組を推進・サポートする部門の設置、DXの取組をリードする人材、その実行を担っていく人材の育成・確保が必要です。

DX推進に対する号令をかけるだけでは経営トップがコミットメントしたことにはなりません。DXによりビジネスモデルや業務プロセス、企業文化を変革していくためには、経営としての仕組みを明確化し、全社で持続的なものとして定着させる必要があります。具体的な仕組みとして組織を整備し、必要な権限を委譲しているか、適切な人材・人員をアサインしているか、予算を十分に割り当てているかを考えましょう。号令をかけるだけでなく、経営者自らがリーダーシップを発揮してこれらを明確化し実践することではじめて、経営としてコミットメントがなされているといえます。

店舗のDX強化の事例

店舗のDX強化の事例

McDonald

マクドナルドは2017年にVelocity Growth Planと銘打ったDX強化計画を、次の6つをテーマに掲げて、策定しました。

  • Retain(既存顧客の保持)
  • Regain(失った顧客の再獲得)
  • Convert(顧客のリピート顧客化)
  • Digital(顧客体験のデジタル化)
  • Delivery(マクドナルドでの体験をより多くの顧客に)
  • Experience of the Future in the U.S. (テクノロジーの力で未来の体験を顧客に)

これらのテーマに基づき、特にAIの活用を推進しており、2019年には推定300億円でAIのスタートアップを買収しました。そして顧客の嗜好・時間・天候などいくつかの条件に応じてAIがパーソナライズしてメニューを提供するドライブスルーをアメリカのドライブスルーに設置しました。また他にも様々なアクセントなどを認識し、対話形式で自動注文できる技術を持つ別の音声認識スタートアップの買収も行っています。将来的にはモバイルやキオスク店舗での注文に技術の活用を試みています。さらにMcD Tech Labsという研究所をシリコンバレーに設立し、最先端のICTをビジネスに活用する研究を進めています。

パルコ

パルコは、スマートフォンの利用が一般的になった2013年には店頭接客とウェブ接客に総合的に取り組み、新たなコミュニケーションや購入体験を提供するという意味を持たせた「24時間PARCO」というキャッチフレーズを打ち出し、DXの推進をはじめました。最近では渋谷PARCOで一部のショップで「電子レシート」サービスを開始しました。購入時にスマホでPOCKET PARCOのバーコードを提示するとレシートのコピーがアプリで閲覧できるようになる仕組みです。お客様はレシートが財布に貯まらずにすみ、パルコ側には店頭で何を購入したのかを把握できるようになりました。

そして蓄積したデータを利用して、お客様が次に何が欲しいのかを予測し、レコメンドに生かしているといいます。将来的にはショップ単位でのレコメンドだけでなく、商品単位でレコメンドの実装を予定しています。またデジタルショッピングセンタープラットフォーム「PARCO as a Service」と名付けた構想を行っています。この構想ではPARCO内におけるARによる経路のナビゲート、位置情報と連携したゲームアプリのように何かに出会える機能、ECや動画配信サービスのようなユーザーの嗜好をとらえたレコメンドなどの体験の拡充を考えているようです。

Shake Shack

Shake Shackはニューヨーク起源のモダンなバーガースタンドとして世界的に人気を集めているファストカジュアルレストランです。2015年からは日本に進出しており、2020年3月時点で店舗を13店舗に増やしました。Shake Shackの課題はこれまで培ったブランドとしての魅力やサービスクオリティを追求することでした。そこで店頭で簡単に短時間で注文できるように分かりやすいキオスク端末を設置、注文からカウンターまでお客様がどのような体験をするのかを分析を行います。そしてストレスを感じる瞬間や待ち時間を短縮できる業務の流れを導入し、注文時の混乱の排除につなげました。その結果、モデルケースとしてシステムを導入した店舗では顧客単価が15%増加し、人件費の削減にも成功したといいます。Shake ShakeはITプロダクトを開発・導入し顧客体験を向上させながらビジネスを前進させたDX強化企業の一例といえるでしょう。

店舗経営・ブランド運営におけるDXとは?DXで企業価値を高めるまとめ

今回は、店舗経営・ブランド運営におけるDXとは?DXで企業価値を高めるについて解説しました。店舗運営事業者がDXを行う理由は、業務改善・効率化のみだけではなく、「顧客視点で新たなビジネス価値を創り出すこと」です。DXにはビジネスモデルや仕事の仕方など、企業文化自体の変革が必要になります。しかし大きな変革に対して現場の抵抗は強いです。経営者は経営としての仕組みを明確化し、全社で持続的なものとして定着させる必要があります。

経済産業省は2025年までにレガシーシステム(既存の古いシステム)を刷新し、DXを強化しなければ、競争力が低下すると警告しています。DXを強化し顧客単価を15%増加し、人件費の削減に成功しているShake Shackのような店舗事業者も現れており、既にDXの強化を開始した事業者とそうでない事業者で大きな差が現れはじめました。早めのDX強化が求められます。

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