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いま注目のハラルとは? 8分で分かる!注目のインバウンド集客術

顧客エンゲージメント
  • hatena

近年、マスコミでも「ハラル」という言葉が度々登場するようになりました。このハラルですが、どういったものかご存知でしょうか?初めて聞いたという方も、飲食店に関わりの深いお話なので、この機会にぜひ知っていただきたいと思います。

ハラルとは?

「ハラル」とは、イスラム法において合法なもののことを指し、意味として、1)イスラム法で合法であること、2)健康的、清潔、安全、高品質、高栄養価であることがあります。イスラム教では、暮らしにまつわるあらゆることに戒律があり、食べ物についても、「食べることが許されているもの」と「食べることが禁じられているもの」が戒律で定められています。

このうちの、食べることが許されているものを「ハラルフード」と呼び、一方、非ハラルのものは「ハラム」と呼びます。豚・肉食動物・爬虫類・昆虫類およびこれらからの副産物はハラムに該当し、食べることは禁止されています。また水中でも陸上でも生きられるカエルやカメ、カニなどの生物も禁止です。アルコール飲料も禁止です。アルコールが添加されている醤油や味噌も禁止です。牛・羊・鶏等はハラルの食材ですが、イスラム教の作法に沿って屠殺処理をしなければなりません。

飲食店にとって関わりの深い点として、イスラム教徒の方がお店を選ぶときに、そのお店が「ハラル認証」を受けているかどうかを基準にされるということが挙げられます。「ハラル認証」とは、お店で扱う原料や全ての食材や調味料などが、「ハラル」であることを証明するものです。

ハラル対応でムスリム旅行者をおもてなし

近年、インバウンド観光客をターゲットにした集客術に注目が集まっているのは、日本の少子高齢化問題が市場にも影響を与え、縮小の一途を辿り、国内のみをターゲットに経済の発展を図ることが難しくなってきていることが原因でもあります。「爆買い」など、流行語となるほどニュースでも話題になっていますし、その高い経済効果が期待され、そこに多数の企業が目をつけ、日々インバウンド消費を増幅させるための対策が練られています。

一口にインバウンド観光客と言っても、ヨーロッパ系、アメリカ系、アジア系、と人種もさまざまです。日本に訪れる彼らは、それぞれが違う文化、ライフスタイルを持っています。その趣味趣向によって、多様な角度からのリサーチ・対策が必要になってきます。その中でも例えば同じアジア系でもベトナム人と中国人ではライフスタイルや好みが全く違っていたり、一遍におもてなしを叶える集客術はないと言えます。

今回、「ハラル」について取り上げたのは、とりわけ宗教上の決まり事や食文化については注意が必要だからです。ムスリム(イスラム教を信仰する方々)旅行者にとって、戒律で定められた「食べることが禁じられているもの」を食べることは、神に背く行為となってしまう趣向の問題を越えたものなので、これに対しては繊細な対応が必要となります。

増えつつあるハラル認証レストラン

前述の通り、例えば、牛・羊・鶏等は食べることが許されているハラルの食材に該当しますが、イスラム教の作法に沿って屠殺処理をしなければならない(加工・処理の方法も細かく定められている)ことや、日本では一般的な食肉の加工処理の仕方では、それに対応できないといった非常に細かい決まり事があります。

また日本では牛・羊・鶏と豚を区別して考えることはあまりありませんが、ハラム(食べることが禁じられているもの)に該当する豚を運んだトラックで一緒に運ばれたり、同じ冷蔵庫で保管されていた牛・羊・鶏はハラムに該当してしまい、豚からとった出汁やスープはもちろんのこと、調理器具も同じものを使ってはならないということです。

このように大変細かく定められた戒律に対応していくのは、設備やコストの面でも容易ではないですが(ハラル認証の取得手続きについても後述します)、そんな中でも、少しずつですが、イスラム圏からの旅行者の増加に応え、ハラル認証を受けたレストランが増えてきています。

東京の観光地付近や、在日外国人の方が多く暮らしている地域を中心に、ムスリム旅行者でも安心して食事を楽しむことができるように「ハラル対応」をされているお店が増えてきており、中には和食やスイーツのお店もあります。

増加するイスラム教徒人口とハラル対応の必要性

そもそもハラル対応するほど、イスラム教徒ってそんなに人口いるの?と疑問に感じる方もいらっしゃるかと思います。実は、ここ数年世界はもとより日本国内でもイスラム教徒は大きく増加傾向にあります。

人口16億人!世界的に増加傾向にあるイスラム教徒

Pew Research Centerの調査によると、世界におけるイスラム人口は 2010年に16億人を超え、2030年には世界人口の26% に達すると推計されています。
引用:イスラム教徒を、日本のお得意客にしよう

国内人口推移も大きく増加 在日教徒は10万人/訪日で35万人

一方、国内に目を向けても在日教徒、訪日観光客ともに大きく増加傾向にあります。

訪日外国客数推移引用:国内ムスリムを対象とした国内ハラール食品対応の方向性

そんな人口の増加を背景に、国内企業でも大手メーカー、飲食店を中心に徐々に認知が進んできている状況ですが、まだまだハラル対応に関しては課題が山積しています。

ハラールレストラン引用:国内ムスリムを対象とした国内ハラール食品対応の方向性

ハラル認証の取得手続き・費用について

どこの機関が認証しているの?
では、具体的にハラル認証を取得するためにはどうすればよいのかご紹介します。
国内では、宗教法人日本ムスリム協会、宗教法人イスラミックセンター・ジャパン(IJC)、宗教法人日本イスラーム文化センター、NPO法人日本ハラール協会などがハラル認証を行っています。いずれも取得すればどの国でも通用するものというわけではなく、国によって基準の厳格さは異なります。

認証に向けた手続きの流れ・概算費用

ハラル認証の取得手順は大きく以下の流れになります。
「申請」→「審査」→「審査結果にもとづく評議」→「認証」

認証プロセス引用:SOY WORLD ハラル認証プロセス

取得にかかる費用はざっと200万円〜数百万円程度になります。

ハラル認証の料金例引用:九州経産局「ハラルビジネスの現状と可能性」

ハラル認証なしでも出来るおもてなし

ハラル認証を取得するためには、それ相応の費用と労力がかかります。おそらく、個人店ではその費用や人材を捻出することが難しいというケースも多くあるかと思います。そんな時は、「無理せず、出来る範囲でしっかりおもてなしをする」この精神が大切です。

例えば、ハラル専用メニュー(※アルコール豚・肉食動物・爬虫類・昆虫類、カニ、アルコールが添加されている醤油や味噌などを除いたメニュー)を用意するなど、必ずしもハラル認証がなくとも、安心感を与えることもできるのではないでしょうか。

日本において、少子高齢化が進んでいく中で、東南アジアからの労働人口が拡大することは必然です。その4割を締めるイスラム教徒への対応を進めることはお店の対お客様だけでなく、優秀な従業員獲得という観点からも重要になってくるでしょう。