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費用対効果の高い販促を目指そうーガストの事例からわかること

マーケティング
  • hatena

大手外食チェーンすかいらーくでは、データ分析の強化により、クーポンの費用対効果を高めることに成功しました。また、グループ内の「ガスト」ではアプリの導入により、マーケティングROI(投資対効果)を大幅に改善しています。このような事例から、費用対効果の高い販促のヒントを見つけていきましょう。

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費用対効果の高い販促事例-POSデータの分析

ガストでは、ビッグデータ分析を始める前、キャンペーンの内容が顧客の特性にマッチせず、クーポンを配っても思うような効果が上がらないという課題を抱えていました。具体的には、同じクーポンを配信していたAとBの2つのブランドに対し、ブランドAではキャンペーン期間の後半まで客足が落ちないのに対し、ブランドBは後半に失速しました。

そこで、その原因を深掘りして調べてみると、ブランドAはカフェ使いが中心で来店頻度が月1回程度の顧客が多いのに対し、ブランドBは食事利用が中心で来店頻度は3カ月、5カ月に1回程度の顧客が中心と、顧客特性がまったく異なることが主要な原因だとわかったのです。

ブランド課題出典:SAP 広告費のデジタルシフトでROIを大幅に改善。外食大手すかいらーくのデジタル化戦略

それまでのクーポンは、デザートやサイドメニューが中心となっていたため、カフェが中心で来店頻度の高いブランドAのお客様には効果があっても、食事中心のブランドBのお客様には響きませんでした。

そこで、ガストでは膨大なPOSデータを分析し顧客別のメニュー開発に活用しました。ブランドBではグリル中心のクーポンに切り替え、クーポンを使って単価を下げても粗利は落ちることがないように工夫した結果、売上効果、利益効果ともに4倍の改善効果が見られました。

売上と広告宣伝費での例出典:SAP 広告費のデジタルシフトでROIを大幅に改善。外食大手すかいらーくのデジタル化戦略

費用対効果の高い販促事例-広告のデジタル化

一般的にレストランチェーンは、宣伝媒体としてテレビCM、新聞広告を中心としたマス広告を採用していますが、顧客1人あたりの獲得利益が高い化粧品業界や自動車業界と比べて、顧客1人につき数十円の利益に過ぎないレストランチェーンが同じ枠を争うことはそもそも効率的とはいえません。さらに消費者のニーズの細分化が進み、マス広告で広くアピールすることも難しくなっています。そこで、コストベースで活用できる自社媒体、かつ消費者1人1人にアプローチできる媒体として、スマートフォン向けのアプリを自社開発することになりました。

ガストでは2014年10月にアプリをリリースしました。来店で貯まるポイント、限定クーポンの提供、フェア情報の発信、メニュー紹介、SNSなどの機能を備えたガストアプリはリリースから半年で約300万件のユーザーにダウンロードされ、アプリでのデジタルクーポン提供により費用対効果は上がり、収益率が上がっていきました。

ガストの広告の7割を占める新聞広告のターゲットと比べて、アプリのユーザー数は10分の1に過ぎませんが、クーポンの利用者数は1.5倍に達しています。コストでいえば新聞の100分の1程度で、マーケティングROI(投資対効果)が大幅に改善する結果となったのです。

アプリと新聞折込チラシの比較出典:SAP 広告費のデジタルシフトでROIを大幅に改善。外食大手すかいらーくのデジタル化戦略

費用対効果の高い販促事例-ガストアプリの特徴

ガストのアプリでは、配信する内容が一人ひとり異なるのが特徴です。年齢や子どもの有無、誕生日といった利用者がアプリのダウンロード時に登録した属性やクーポンの利用履歴に合わせてクーポンを配信しています。

例えば、未成年のお客様にアルコールの割引クーポンを配信しても効果がないため送りません。配信の頻度も個人によって変えています。前日に利用したお客様にクーポンを配信しても邪魔に思われてしまうだけなので、「そろそろ食べたい」と消費者が思うタイミングを狙って配信しています。

ただ、飲食チェーンにとって、クーポンの発行はもろ刃の剣。価格訴求力が増して来店意欲を高めることができる半面、乱発するとブランド価値が毀損し、クーポンなしでは来店されづらくなってしまいます。その点について同社は、属性や過去の利用履歴などデータ分析を駆使し、タイミングを見計らいながら消費者にお得な情報を発信し続けることで、継続的な来店につなげるとしています。

実際、アプリにクーポンを配信して来店してもらえる確率は、メールマガジンの10倍にものぼります。アプリから店舗への送客効果で毎月数億円の売り上げ増が見込めているとのこと。手薄だった30~40歳代の女性らの開拓にもつながり、着実に効果を上げています。

ガスト アプリ出典:日本経済新聞 「ガストアプリ」集客着々 配信内容、顧客に合わせ

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費用対効果の高い販促事例-ガストアプリ成功の秘訣

ターゲットを絞った広告

ガストアプリの成功の秘訣は「セグメント(=分野・市場・フィールド)を切り分けて、ターゲットを絞った広告を配信したこと」です。これまでの新聞広告やCM広告などの「分母を大きくして、集客率を上げよう」というマスマーケティング戦略では、顧客属性を深く絞り込みにくく、たとえば子供を持つファミリー層の顧客に限定して出した方が効率が良い案内でも、すべての顧客に向けてしか配信できませんでした。

しかし、アプリに切り替えてからは、登録時の顧客情報やキャンペーン情報の閲覧状況などから顧客属性を予測し、セグメントを絞ったメール配信に切り替えています。その結果、クーポン送付者の来店率は4倍になったといいます。

その他の事例

費用対効果の高い販促事例として、すかいらーくが行ったTwitterでのキャンペーンがあります。すかいらーくは、2017年にTwitter公式アカウントの本格運用を開始しましたが、「ガスト」のアカウントをフォロー&リツイートすると店舗で使えるクーポンがその場で当たるという、Twitterのオートリプライ(自動返信)システムを使ったキャンペーンを、季節のイベントなどに合わせて連続的に実施しました。
Twitterプロモーションツールを利用することにより、従来施策と比較してキャンペーンの総リツイート数が10倍、新規フォロワーの増加率が1.5倍に上昇する大きな成果を生み出しています。

参照元:【導入事例】「ガスト」公式Twitter、インスタントウィン施策でフォロワー増加率が1.5倍に上昇しブランドの「脳内シェア」向上を実現

費用対効果の高い販促事例-まとめ

ガストの事例から、デジタル広告へのシフトで「収益率高く消費者へリーチできる」傾向があることが分かりました。ただし、デジタル広告化=自社アプリの導入が必ずしも有効という訳ではありません。

  • メルマガなどの会員データからの属性グループ作り
  • POSデータからのユーザーニーズの分析
  • HPのアクセスデータ、メルマガの配信実績からのタイミング分析
  • クーポンの利用率・内容の分析による適切なキャンペーン案の立案

など、今あるデータを分析し、ターゲット毎の広告戦略を立てた上で、デジタル(メールやネットクーポン)配信をすることで広告のデジタルシフトが出来るのです。スマホアプリについては、自社開発しなくても、SHOPFORCE(ショップフォース)連携のアプリ『スタンプス』のような、集客・囲い込みのための機能をたくさん備えたアプリを導入する選択肢もあります。

広告のデジタル化によって、費用対効果が高く、継続的に来店していただけるような販促を行っていきましょう。