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銭湯が無料ロッカーで100円を入れさせる心理学的財布効果

マーケティング
  • hatena


銭湯でコインロッカーを利用するときに、「何で帰りに戻ってくるのに、コインロッカーにわざわざ100円を入れて鍵をかける必要があるの?」こんな疑問を持たれたことはないでしょうか?
 
今回はこの身近な疑問について心理学の観点から考えてみたいと思います。

コインロッカーに100円入れるのはそもそもどういう目的なの?

調べてみると銭湯の運営サイドからは、下記のような目的があげられています。
 

「昔からの仕組みであるため、詳しいことはわかりませんが、気軽にお客様が鍵を持ち帰ってしまうことを防ぐ、という理由を聞いたことがあります。10円ではなく、100円であることも、鍵のより持ち帰りの敷居を高くするためではないでしょうか。」(図書館)
「上着などの荷物が多いお客様が、ロッカーを気軽に3つ4つと複数利用してしまうと、混雑してしまった際に、他のお客様がロッカーを使えなくなってしまうんですね。それを防ぐためというのが、大きな理由です。」(スーパー銭湯)

 
なるほど、確かに迷惑行為を抑止する点では一定の効果がありそうです。

本当にそれだけの目的?

自販機
写真:honey-boo ) ゚●゚(は引率係
しかし、銭湯などのコインロッカーに100円入れるのは本当にそれだけの理由なのでしょうか?それであれば、「デポジット制にするより鍵を貸出制にすればよいのでは?」と思ってしまいます。
ところで、こういう経験をされたかたはいませんか?お風呂あがりにコインロッカーから荷物を取り出し100円を回収する。そして、その100円玉を握りしめながら2、3歩歩くとドリンクコーナーが、「あー、喉乾いたなー、あ!ちょうど100円持ってるわ!」と。
あのコインロッカーの100円は消費に繋がりやすいのです!ここにもうひとつ目的があったのです!!

「心理的財布」観点での考察

財布
この行動は、心理的財布という概念で説明するとさらに納得できそうです。

心理的財布とは、個人の価値観の違いより、同じ金額でも商品・サービスによって
お金の支払いに伴う”心の痛み”が違うとういことであり、”心の痛み”が小さければ購入しやすくなるということです。

参考: 心理的財布を開けることが、購入スイッチを押すヒント
銭湯のコインロッカーの場合は、一度100円を顧客の財布から出させることで心理的財布を開けてあげること、購入スイッチを上手く押していることになるのです。

値段の心理学 心理的財布、『心理的ものさし』

銭湯のコインロッカーの話だけでなく、「ただ安ければ売れるというだけではない」という消費者心理が奥深く関わってきます。心理的財布以外の考え方として、『心理的ものさし』という概念もあり、こちらも参考になるかと思います。
 
「この商品とあの商品を比べるとこっちの方がお得だ」とか、「あの店のサービスがこんなに高い金額なんて納得できない」などといった判断は、人はこの『心理的なものさし』を使って判断してしまうことが多いようです。人は、物事を判断するときに、この心理的財布や『心理的ものさし』を度々使っているといわれています。
 

ところが、この心理的ものさしは、時と場合によって、伸びたり縮んだりする、結構いい加減なものようです。そのため、よく誤りを犯すことがあります。
例えば、4500円から4700円に値上がりした時、多くの人はその200円の差をあまり気にしませんが、9800円と1万円だったら、同じ200円の値上がりでもものすごく大きな変化として測ってしまいます。

参考:値段の心理学
 
「顧客単価を向上させたい」、「商品のプライシングに迷っている」といった店舗経営者の方は、この心理的財布、心理的ものさしという概念を踏まえて検討されると新たな発見があるかもしれません。
 
しかし、この仕掛けに気付いてしまうと銭湯でコインロッカーの100円を利用してコーヒー牛乳を買ってしまうたびに悔しくなってしまいますね。

まとめ

銭湯のロッカーひとつとっても、人々の心理のハードルを変化させるような仕組みがありました。たかが100円といえども、塵も積もれば山となるように、ロッカーの数だけ消費が生まれるのであれば大きな売上げにつながっていくはずです。
 
心理的財布、心理的ものさし、など心理学の考え方を活用すると、ちょっとしたことで売上アップのヒントが得られそうです。お店を運営されている方は、ちょっとした仕組みを活用することで、銭湯の100円ロッカーのようにお客様にある種簡単にお金を出していただけるように工夫されるとよいのではないでしょうか。